書影『スキル』(クロスメディア・パブリッシング)『スキル』(クロスメディア・パブリッシング)
高瀬敦也 著

 社会人になっても自己紹介は苦手でした。起業後にはさらに困りました。苦手でも自己紹介できないと仕事になりませんし、紹介できる実績もないのです。そこで私は自己紹介を諦め、「これから私がしたいこと」を説明することにしました。すると、いろいろなことが大きく変わり始めます。どんな人でも、私の「未来の自己紹介」に興味を持ってくれるようになりました。

 先ほど紹介した通り、私は「やりたいこと」のストックが常に数十個あります。そして場面に応じて、そのうちの2~3個をお話するようにしています。 「私は高瀬敦也です。私のつくったコンテンツを集めてディズニーランドのような世界観ゴリゴリのテーマパークをつくりたいです。F1とグランツールの開催を追っかけながら毎年世界旅行をしたいと思っています。家族や友人を集めて100世帯ぐらいのコミュニティで村をつくりたいです。」

 これを聞いて、バカだなぁと思われた方もいるでしょう。ほぼ実現しない夢を語る中年ですよね(笑)。しかし、私のキャラクターは伝わりますし、価値観や人生観も伝わります。質問もしやすいですよね。一般的な自己紹介は「過去」を語るフォーマットでできていますが、この自己紹介に過去の要素はひとつもありません。

「私はこれからこういうことをしたいと思っています」と伝えると、「この人はこういうことがしたいんだ。だったら、自分も一緒にやってみたいな」とか、「その分野に精通している○○さんを紹介してもいいかもな」と、同じ未来に向けたコミュニケーションが可能になります。

 過去の話は、すでに完結していますが、未来の話は他者が入り込む余地があります。仮にやりたいことが一致しなくても、相手は応援したい気持ちになったり、わくわくしたりします。夢やビジョンをキラキラ語る人に出会うと、刺激も受けますし、「この人のやりたいことに付いて行かなければ、自分が損をするかも」という感情も湧いてきます。未来のことは誰にも分かりませんから、どんな人にでも可能性が開かれている以上、否定的な判断はしづらいものです。

「やりたいことを語る」ということは、「未来を語る」ということです。未来を語る人には、可能性を感じます。すると自然に情報と人が集まります。集まった情報と人は、やりたいことと直結していなくても、自分の資産として力になります。それが「やりたいことを言う力」というスキルです。