そのような子どもは後(通常は思春期)に、この信念に対抗するプログラムを自分で開発し、親の圧力や期待に反抗するようになりますが、反抗しても親と関わっていることには変わりなく、結局は、親によるプログラムに縛られたままでいることになります。その影子には青年期以降も、親に支配されていた経験が刷り込まれたままになっているのです。
そして、この刷り込みの眼鏡を通して、他者のことを「支配的で自分よりも大きな存在だ」とすぐに思い込んでしまい、その人の言いなりになるか、反抗するかのいずれかの態度をとるようになります。
けれど、このような人でも、自分の影子のことをよく知り、心の奥深くに刷り込まれた事柄とそこから生まれた信念を解き明かすことができれば、相手と同じ目線に立って、相手に共感することができるようになります。
共感力のない親に育てられる不幸
子は親の言動で自分の感情を類別する
子どもの気持ちにあまり共感できない親は、子どもの欲求や感情を正しく認識できていません。そのような親に育てられた子どもは、ある状況に対して正しい感情を持ったとしても、「私が感じていることや考えていることは間違っているんだ」と思うことが多くなります。
子どもに対してなかなか共感できない親は、じつは自分自身の感情ともうまく向き合えていません。自分自身の感情と向き合うことは、共感するための前提条件になるのです。
たとえば、子どもが母親に「ヨナス君が僕と遊んでくれないんだ」と言って、悲しんでいたとします。このとき母親は、自らの悲しみの感情と向き合う必要があります。そうでなければ、子どもに起こった状況を子どもの立場になって感じることはできません。
もし、母親が自らの悲しみの感情を脇に追いやったり、無視したりしていたら、子どもの悲しみに対しても同じように対処することになります。その場合、母親は子どもへの対応に困り、ぶっきらぼうにこう言うかもしれません。「そんなにメソメソしないの!その友達がおかしいんだから」と。そうすると、その子どもは「この状況でこの感情を持ったなんて、僕が間違っていたんだ。僕は悪い子と友達になったんだ」といったことを学ぶことになります。