「防衛費の増額」と「異次元の子育て支援」は
将来的には増税でまかなうことになるだろう

 このあと解散・総選挙がいつ行われるのかが焦点になっています。来年9月に自民党の総裁選がある関係で、来年6月頃には解散・総選挙があるかもしれません。先日の国政補選では、与党は1勝1敗に終わりました。正直、このままの状況だと解散をすれば与党は議席を減らしかねません。なにしろ内閣の支持率は低いのです。

 一方で今の政府は大阪万博でお金が足りなくなるとぽんと予算を出すなど、どうも支出にゆるい傾向があります。大阪万博は予算がどんどん増えているとはいっても2350億円ほどの話なので、よくないとはいってもまだいい方なのですが、特にお金がかかるのが防衛費の増額と異次元の子育て支援です。どちらも3兆円規模の予算増が必要でかつ、一回きりではなく継続的にお金がかかります。

 以前であれば、こういった政府予算については大蔵省主計局が目を光らせていたのですが、財務省になってからは幹部人事を官邸が握っているので歳出はどうしてもゆるゆるになります。

 今の内閣が目指している異次元の子育て支援ですが、おそらく参考にしている成功例はハンガリー政府の子育て施策です。ハンガリーでは子どもが多い家庭が経済的に優遇されます。

 有名なのは4人子どもを産んだ母親は生涯、所得税がゼロになることです。他にも車を買ったり不動産を買うのに100万円規模の補助金が出るとか、教育ローンが返済免除されるとか、とにかく子どもの多い家庭はお金がかからない制度になっているのです。

 やっていることは金額的にまさに異次元で、そこまで子育て支援にお金をつぎ込んだことでハンガリーでは人口減少に歯止めがかかっています。一方でこの子育て支援は、ハンガリーの一般国民に隣国よりも多い税負担を強いていることで国内でも賛否があることも事実です。

 ハンガリーでは、GDP比5%の規模で子育て支援にお金が投入されています。その背景は、長期的に見て人口が減ることが国の衰退につながることへの危機感がコンセンサスになっていることです。

 日本でも異次元の子育て支援政策が打ち出されましたが、国民の目は冷ややかです。要は「その程度の施策で人口減少に歯止めがかかるとは思えない」という意見です。

 仮に日本でGDP比5%の支援策を打ち出すとしたらそれは年間で29兆円の支出になるわけで、それが実現できたら確かに人口減少に歯止めがかかるかもしれません。しかし、その支出は消費税の税収額に匹敵します。

 要は消費税を20%に上げてまで少子化対策を行えば日本の人口減少には歯止めがかかるかもしれませんが、それが国民のコンセンサスになるのは無理でしょう。一方のハンガリーは、27%と世界一消費税が高い国です。