「相談できる人」を探す

 相談しない理由に、「相談する人がいません」と答える人は非常に多いです。そうはいっても、配偶者や親しい友人はいます。「相談できない」のではなく、「相談しづらい」「相談するのが恥ずかしい」と、自分でメンタルブロックをかけているのです。あなたを心配している人、気にかけてくれる人は必ずいます。その人たちはあなたの相談を歓迎してくれるはずです。

 まずは、この人なら相談できるという人を1人だけ決めておきましょう。友人であれば、「親友」が1人いれば十分です。友達が10人いても、本当に困ったときに相談できる人が誰もいなければ意味がありません。

 また、夫婦やパートナーと普段から些細な問題について気軽に相談できる関係を作っておくことも重要です。日常の些細な問題について相談できない人が、重大な問題が起きたときに相談できるはずがありません。

決める前に相談する

 会社を退職する場合、事前に上司への相談なく、いきなり辞表を持ってくる人が近年は多いそうです。「退職」に関するある調査によると、退職の意思を伝えた際に、引き留められた人は、53.7%もいました。事前に相談していれば、会社側のなんらかの譲歩や待遇改善が引き出せたかもしれません。

 相談せずに、いきなり大きな決断をするのは、もったいないことです。上司が信頼できないという人もいるでしょうが、部下の相談を受けるのが上司の仕事です。上司、会社側も「言われて初めて気づく」こともあります。相談しづらい相手であっても、相談する勇気を持って「思い切って相談する」ことで可能性が開けるのです。

「相談窓口」を活用する

「家族も友達もいない。相談できる人は誰もいない……」

 そんな人でも、大丈夫です。すべての都道府県、市町村の各自治体は、必ず「悩み相談」の窓口を持っています。「健康相談」「法律相談」「お金の相談」「介護の相談」など、各種相談に無料で乗ってくれます。
 そのことすら多くの人は知りませんし、利用する人も非常に少ないそうです。相談の窓口は自治体のウェブサイトや広報誌に書かれていますので、調べればすぐにわかります。わからなければ、自治体に直接電話すれば教えてくれます。

 たとえば、「こんな症状で病院に行っていいのだろうか?」という悩みも、自治体の健康相談にしてみるとよいのです。

 私の患者さんで、借金で自殺まで考えていた人が、自治体の「お金の相談」の窓口でたった一度相談しただけで、スッキリ解決したケースもありました。専門家の説明を受けるだけで、安心・納得することは多いのです。

 匿名の電話で相談できる窓口もあります。「どうしても名前や顔を知られたくない」という人も、まずは電話で相談しましょう。

 自分で解決できなければ、誰かの手を借りていいのです。多くの人があなたに手を差し伸べたいと思っているのです。そのことに気づきましょう。

人は「頼られると嬉しく感じる」もの

 道に迷っているときも、黙っていたら誰も声をかけてくれません。

 しかし、「道に迷っているのですが」と声をかけると、とても詳しく教えてくれます。人間は、頼られると嬉しく感じる生き物です。自分の知識や経験を使えると、その人は承認欲求を満たすのです。

 ですからあなたも、「相談できる人がいない」と言わないで、自分のプライドにとらわれず、相談するべきです。そうすると必ず扉は開きます

 あなたが壁にぶつかった状態のままだと、もっと大きな迷惑を人にかけるかもしれません。ストレスフリーに生きるために、もっと気軽に相談できるようになりましょう。

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。
コロナ禍に27万部のベストセラーとなった著書『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)のほか、『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)など30冊以上の著書がある。