新型コロナウイルス禍が過去のものとなりつつあるが、多くの業界においてコロナ前への完全な逆戻りは起きず、新たな事業環境に突入している。そこで上場約50社、15業界における月次の業績データをつぶさに見ると、企業によって業績の明暗がはっきりと分かれている。前年同期と比べた月次業績データの推移を基に、「嵐」から「快晴」まで6つの天気図で各社がいま置かれた状況を明らかにする連載「明暗!【月次版】業界天気図」。今回は、9月度の陸運・物流編だ。
佐川急便“初の2年連続値上げ”
ヤマトはどうする?
陸運・物流の主要2社が発表した2023年9月度の月次業績データは、以下の結果となった。
◯ヤマト運輸(ヤマトホールディングス〈HD〉)の宅配便取り扱い実績
9月度:前年同月比97.2%(2.8%減)
◯佐川急便(SGホールディングス〈HD〉)のデリバリー事業取扱個数
9月度:同97.2%(2.8%減)
2社とも前年実績を下回った。20年春以降の宅配市場は、「巣ごもり需要」により通販用途が爆発的に増加。ヤマト運輸や佐川急便などの取扱個数は急増した。翌21年はその反動減もあって伸び率自体は鈍化したが、個数ベースではさらに伸ばした。
ところが22年以降は伸び率がさらに鈍化し、23年に入ると個数は前年割れになるなど足元の実績は低調だ。コロナ禍の「特需」は終わったと見ていいだろう。また、物価高への対応や労働環境の改善を理由に、23年4月から佐川急便は平均約8%、ヤマト運輸は同10%の運賃値上げも断行している。この影響もあるのだろうか?
さらに10月27日、佐川急便が24年4月から平均約7%の値上げをすると発表した。初の2年連続値上げだ。実は、ヤマト運輸も今春から宅急便の価格を「毎年度改定」する方針を出している。次ページでは、9月度業績だけでは分からない過去の業績推移をたどりながら、ヤマト運輸と佐川急便を取り巻く経営環境について詳しく分析していこう。すると、2社とも値上げせざるを得ない苦境があらわになった。