CE型ビジネスモデル転換の成功例と
ブレークスルー思考
基調講演と特別講演に続いては、パネリストとして基調講演の梅田氏(9月21日は小野田氏)と特別講演の田中氏、そしてブリヂストンのグローバルサステナビリティ統括部門 統括部門長の稲継明宏氏が登壇。DXコンサルティングファームのRidgelinez上席執行役員 Partnerの赤荻健仁氏がモデレーターを務め、パネルディスカッションが行われた。
上席執行役員 Partner Manufacturing, Engineering & Construction Practice Leader
赤荻健仁 氏
自動車、産業機械、電機、建材、医療機器などさまざまな製造業のバリューチェーン最適化に向けた経営革新・業務改革・情報システム企画・導入のコンサルティングに長年従事。近年は成長戦略に向けたビジネスモデル変革などを手がけ、製造コンサルティングを主導。
まず、稲継氏は「サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」という2050年ビジョンに基づく、ブリヂストンのSXについてプレゼンテーションした。
エネルギー、エコロジー、エモーション、エンパワーメントなど8つのE(「ブリヂストンE8コミットメント」)を軸とする取り組みや課題に触れた後、循環型ビジネスモデルの実践例として、稲継氏はタイヤのリトレッド(ゴムの貼り替えによる再利用)事業を挙げた。これは、新品タイヤの売り切り型ではなく、新品・リトレッド・メンテナンスなどを組み合わせたサービスであり、使用原材料やCO2排出量の削減といった社会価値と、安心・安全な運行やトータルオペレーションコスト削減といった顧客価値を同時に追求する事業である。車両の運行データを活用し、運行オペレーションの最適化をサポートするサービスにも挑戦するなど、ブリヂストン流のモビリティエコシステムの構築を目指す。
これに対して他のパネリストからは、「計画的にCE型にビジネスモデルを転換し、成功した日本では数少ない事例だ」(梅田氏)、「顧客を中心に据えて提供価値を高めながら、会社の芯から地球環境に向き合っている点が素晴らしい」(田中氏)といったコメントが寄せられた。
グローバルサステナビリティ統括部門 統括部門長
稲継明宏 氏
2004年、ブリヂストン入社。2015年アメリカより帰任後、全社のCSR・環境戦略企画および推進業務を統括。2018年から経営企画部長としてグローバル本社の経営企画業務に従事した後、現在サステナビリティと経営戦略との統合などに取り組む。
会場にいる参加者とパネリストのQ&Aを経て、最終セッションであるワークショップに移った。立教大学ビジネススクールの田中氏がファシリテーターを務めたこのワークショップでは、「宇宙レベルで考え、物理学レベルで突き詰める」と公言しているテスラのCEO、イーロン・マスク氏の思考法や、アップルでのSX実践の要諦に触れた。また、ブレークスルー思考は常識の否定から始まることを体感するために、業界や自社、自分自身の常識をリストアップしたり、自社での「温室効果ガス排出量の削減」や「CEの実現」についてグループディスカッションを行ったりするといったプログラムも盛り込まれた。
ワークショップ後の懇親会を含めて、参加者にとっては自社のSXに向けてさまざまな気づきやヒントを得られる1日となったのではないだろうか。
◉構成・まとめ|田原 寛 撮影|佐藤元一