将来への不安からくる
高い成長意欲を受け止め、伸ばしていく

 一社に長く勤めることが必ずしも「安心・安全」とはならなくなった今、スピード感をもって成長し、環境がどう変化しようと社会で通用する力をつけておきたいという意向は顕著になっています。多様なキャリアパスがある中、その時々で自分に合ったものを選び取っていきたいという感覚は、将来への不安感の強さからくるものでしょう。

 企業側は、こうした若い世代の不安感・危機感からくる成長意欲に応えられるよう、画一的な人事制度ではなく、一人ひとりの「働く価値観」に合わせて選べるキャリアパスの枠組みを用意できるかがますます大事になっていくでしょう。それが、入社後の定着や活躍につながると考えられます。

 全国求人情報協会による『2020年卒新卒者の入社後追跡調査』では、入社前の段階で5人に1人は転職志向を持っていたものの、入社後には、転職志向であった人の約4割が勤続志向に転じている、との調査結果も出ています。その背景にあるのは、「自分はこの会社で仕事をするのに向いていそうだと感じた」という適職意識であり、担当業務以外のことも相談できる相手がいる場合、適職意識を感じる割合が高まっています。
 
 多様な価値観を受け入れ、個を大事にし、情報をいち早くキャッチする中で環境変化に敏感に動いてきた20代の若い世代。だからこそ、「今の環境のまま、働き続けていて大丈夫だろうか」「社会環境はまた激変するのではないか」「自力で生き抜く力はついているだろうか」など、常に自分が置かれた立場を振り返り、よりよい未来を自分でつかみ取ろうと考える力、行動する習慣がついているといえます。

 仕事選びや職場、企業選びにおいても従来にはない価値観で、自分らしいライフキャリアを選び取っていく。その姿勢に理解を示すことが、これから社会に出る若い世代へイキイキと活躍できる機会を作ることにつながると考えています。

(リクルート 就職みらい研究所 所長 栗田貴祥)