弟子が見つけた「20倍株」を
私が見逃した理由

 サイバーエージェントの藤田晋社長は、相当な量の映画や書籍に触れることで洞察力を養っているという記事を読みました(日本経済新聞社)。こうしたインプットも定性的な判断力や感性を伸ばすうえで非常に大切です。

 投資に対する感性を磨くうえで私がおすすめしているのが二十四節気七十二候カレンダーです。これは春夏秋冬を6つに分けて1年を24に分類し、さらにそれぞれ三等分して72の季節に分けています。つまり、このカレンダーに従えば、5日に1回は何らかの季節の変化を感じ取れることになります。最近ならコオロギが鳴き始めたとか、少し先なら霜が降り始めたとか、花鳥風月や春夏秋冬を意識することが大事です。自然も株式もサイクルなので、その循環の感覚がわかれば、投資にも役立ちます。そういう意味では、最近流行っている俳句などもいいですよね。

四季報の達人が語る「UFOを信じる人が投資で成功する大真面目な理由」取材中に「UFOの存在」について興味深い話をしてくれた渡部清二さん 撮影:ダイヤモンド・ライフ編集部

 ここまで、投資先選びにおける定性情報や感性の重要性という話をしてきましたが、自分の主観だけが強くなりすぎてしまうのも問題です。

 私の失敗談を紹介します。複眼経済塾では、塾生に注目企業を挙げてもらっているのですが、その中の1つに円谷フィールズホールディングス(2767)がありました。 私の中では、パチンコと言う時点で投資対象にはならないと判断してしまったのですが、2022年の初めに200円台だった株価は、23年8月には3000円を超えました。1年半の間で実に15倍まで伸びて、テンバガーを達成しました。私の先入観が強すぎたあまり、IPビジネスの強さを見逃してしまいました。定性情報や感性といった主観と定量で測れる客観はバランスが大事なのだと思い知らされました。

 他に塾生が見つけて、私が見逃した企業を挙げるとAbalance(3856)。投資家に外国資本がたくさん入っていたので、投資対象とは見ていませんでした。しかし、その後はアジアを股にかけて再エネ事業を手がけて急成長し、株価も2022年1月に600円ほどだったものが、2023年5月には1万3000円を超えるなど、1年ちょっとの間に20倍に成長しました。再エネに対して素直にストーリーを描けた塾生のほうが正しく銘柄を選ぶことができ、先入観に毒された私は見抜けませんでした。私が伝授した手法ではなりますが、いつか道場破りされるんじゃないかとヒヤヒヤしています。
 
 定量的な投資で勝てるのは、機関投資家のようなプロたちです。彼らは個人投資家を自分たちの土俵で戦わせることで、自分たちが勝つことを考えています。彼らに惑わされることなく、感性を磨きながら定性的な情報を駆使して投資先を選んでみてください。それが個人投資家が勝つための有効な手法なのです。