11月8日から10日まで、幕張メッセで「第8回鉄道技術展2023」が開催された。新しい時代のニーズに応えた旅客サービスやメンテナンス業務にまつわる最先端技術・導入事例について、筆者が見てきたものからいくつかの興味深い事例を紹介したい。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
鉄道総合技術研究所が開発した
地震の揺れを推定するシステム
11月8日から10日まで、幕張メッセで「第8回鉄道技術展2023」が開催された。これは「安全・安心・快適・環境・省エネ」をテーマとした鉄道全般の技術・製品・サービスの総合展示会で、「交通・鉄道システム」「土木・インフラ技術・施設」「電力・輸送・運行管理」「車両、インテリア」「旅客サービス」「自動化技術」「次世代モビリティサービス」など、鉄道のあらゆる分野に関係する企業、団体が出展した。
2021年に開催された前回第7回の出展者数は、コロナの影響で海外の出展者が減少したこともあり2019年の第6回から3割減の359社・団体だったが、今回は第6回を上回る569社・団体が出展する盛況となった。
筆者は8日に参加し、ITやデジタル技術の活用で業務プロセスを変革する「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」の観点から、新しい時代のニーズに応えた旅客サービスやメンテナンス業務にまつわる最先端技術・導入事例を中心に見学してきたので、その中からいくつか興味深い事例を紹介したい。
まずは近年、激甚化する自然災害に対応した新技術だ。鉄道総合技術研究所の開発した鉄道地震被害推定情報配信システム「DISER」は、鉄道沿線に設置された地震計のデータを解析し、地震計と地震計の間の区間の揺れを推定するシステムだ。
これまでは、一つの地震計が基準値を超えた場合、数キロにわたる受け持ち区間全体の運転を見合わせていたが、DISERを用いると500メートル単位の揺れを推定できるため、運転再開に必要な点検区間を絞り込める。
また一定規模の地震が発生した場合、列車は速やかに停車するが、基準値を超えた区間は安全が確認されるまで走行することができず、駅間で長時間停止してしまう。これ自体は安全のためやむを得ないのだが、基準値に満たない区間と判定されれば次駅まで最徐行で移動できるため、旅客を救済できる。JR西日本は2021年から、この目的でDISERを利用している。