AIを活用した
列車への着雪対策
続いて雪にまつわる技術だ。JR東日本のグループ会社であるJR東日本コンサルタンツは、秋田新幹線など豪雪地帯を走る列車の台車まわりに付着する「着雪」の自動判定および融雪装置の自動制御の技術を開発した。
たかが雪と思うかもしれないが、これがなかなか厄介な問題だ。車体下部に付着した雪は次第に氷の塊となり、高速走行中に落下すると設備を破損する可能性がある。そこで駅停車中に人力で「雪落とし作業」を行うが、人手を要する上、判断が難しい。そこで台車下部の映像から着雪レベルをAIが自動判定し、着雪を溶かす温水噴霧装置を自動で制御するシステムだ。将来的には着雪レベルに応じて噴射時間も自動で制御したいという。
着雪対策は北陸新幹線のJR西日本区間や東海道新幹線でも行われているが、こちらは東北地方と異なり、限られた大雪の日に対応が必要になる。そこでJR西日本は気象予報データと実際の着雪データをAIが分析、学習し、雪落とし作業の必要性(つまり人員確保の必要性)を事前に予測する。
一方、関ヶ原の雪規制が泣きどころの東海道新幹線は、前記新幹線より運転本数がはるかに多いため、人力では追い付かないが、一方で東北、北陸ほどの大雪にはならないので、各車両の床下に融雪ヒーターを設置している。また線路の状況をカメラでリアルタイムに把握し、徐行の判断を適正化し、ダイヤへの影響をできる限り減らす取り組みを進めている。このように着雪対策一つとっても各社、各路線の特性ごとにアプローチが異なるのは面白い。
この他、JR東日本は線路際に積み上がった雪が崩れて線路を支障する事態を、降雪量と気温データから予測する「なだれ危険度評価システム」や、河川の増水で橋脚まわりの土砂が流されて橋脚が傾斜や倒壊する「洗掘」と呼ばれる現象の予兆をとらえるため、加速度と傾斜計を設置してモニタリングする「洗掘計」など、センサーやAIを活用した災害予測システムを出展した。
ドライバレス運転に向けた
さまざまな安全装置
この他、安全分野では画像解析AIの発展が著しい。同じくJR東日本は将来のドライバレス運転を見越して、車両の運転席に距離を測定できるステレオカメラを設置し、前方の障害物を自動検知するシステムを開発中だ。
自動車では衝突被害軽減ブレーキとして広く普及しているが、制動距離が自動車より長い鉄道では、遠方の障害物を早期に検知する必要があり、映像から距離測定と物体検知する難易度は高いそうだ。現在、京浜東北線の列車1編成に搭載し、実用化に向けて走行試験を行っているという。
またホームに設置したカメラで旅客の乗降や車両への接近を検知し、安全確認やドア開扉を支援するシステムの開発も進んでいる。大手電機メーカー富士電機が開発中の「列車運転支援システム」は、今後のワンマン運転、ドライバレス運転の拡大を見据え、ホームのカメラ映像をAIが解析して乗務員、係員のホーム安全確認とドア開閉作業を支援するシステムだ。
このシステムはホームに複数設置したカメラ映像から人・物体の動きを認識、追跡し、旅客がホームを歩いているだけか、列車に乗ろうとしているか、車両に接近していないかなどリアルタイムに安全か危険かを判定し、乗務員や係員にドア閉めのタイミングを通知する。