ストレスなく使える
JR東日本のQRリーダー

 営業分野ではICカードに加え、QRコード乗車券や、クレジットカードタッチ決済の普及に対応した新型自動改札機が目立った。現時点でこれら乗車券を導入または実証実験中の事業者は、既存の自動改札機に読み取り部を追加する形で運用しているが、今後の自動改札機はこの3機能の一体搭載がスタンダードになるようだ。

写真:日本信号が出展した新型自動改札機日本信号が出展した新型自動改札機(筆者撮影)

 一方、大手電機メーカーは顔認証やゲートレス改札などの未来型改札のコンセプトモデルを多数出展していた。大阪メトロで顔認証改札の実証実験が行われているとはいえ、これらサービスの利用には専用アプリや事前登録が必要だ。また利用形態自体が根底から変わるだけに、何年後の社会実装を想定した技術なのか、まだ将来像が見えないと感じた。

 実用性という意味で一番驚いたのが、JR東日本が更新を進める新型自動改札機に設置されたQRコードリーダーの性能だ。QRコードは手軽に使える半面、読み取り部との距離や角度によってはなかなか読み込まないことがあるが、改札でこれは致命的だ。

 例えば沖縄都市モノレールは2014年、国内鉄道事業者では初めてQRコード乗車券を導入したが、現地で体験したところ、なかなか読み込まず使いにくかった記憶がある(現在は改良されているかもしれない)。当時、QRコードの決済利用が普及途上の時期であり、また、こちらの不慣れが原因だったのかもしれないが、これでは利用が少ない沖縄ならともかく、大都市で使えないと感じたものだ。

写真:JR東日本メカトロニクスが開発したQRリーダーJR東日本メカトロニクスが開発したQRリーダー

 そこで、JR東日本メカトロニクスは高速処理が要求される駅務機器向けQRリーダー「QB40-XR-J」を開発した。デモ機を触ったが、距離が離れていても、静止させなくても、即時に読み込み、全くストレスがない。JR東日本は2024年からQRコードを活用した乗車サービスを展開する予定だが、なるほどQRコード乗車券はもう完全に実用性を確保していたようだ。

 日本企業のデジタル化は遅れていると言われがちだが、鉄道業界は(ややマニアックな領域に偏っている感はあるが)さまざまな試みが進行中だ。本稿で紹介しきれなかった技術、アイデアを含め、正式にお披露目される日が楽しみだ。