現在の参加率上昇の勢いが続けば、今後5年でG7諸国の平均に追い付き、労働力が330万人も増える計算となる。仮にこれが実現すると、プラスの供給ショックとして賃金とインフレの低下ペースを1年は早め、金融緩和への転換も前倒しとなる。その効果を経済モデルで定量化すると、今後5年間の成長率を毎年0.2%ポイントずつ押し上げる。

 一方、労働参加率の上昇要因を考えると、このペースが続くと考えるのは楽観的に過ぎるようだ。

 第一に、コロナ禍による在宅勤務などの柔軟な働き方の普及が参加率を上昇させたが、今後これ以上の柔軟化が進むとは考えにくい。むしろオフィス復帰の奨励など巻き戻しの動きすら見られている。

 第二に、企業が育児休暇等の厚生や手当を急速に充実させたことも上昇要因だが、コロナ禍後の深刻な人手不足でやむを得ず行った側面が強い。労働需給の緩和と企業業績の悪化が当面予想される中で、いつまでも続くものではない。

 第三の要因である出生率の趨勢的な低下は当面効き続けるだろう。ただ、短期的には労働力を増やしても、より長期では生産年齢人口を減らすことを忘れてはいけない。

 ただ、現在の勢いが5年も続くのは無理だとしても、女性労働参加率上昇の動きが急に止まることはないだろう。政策支援等で予想以上に持続する可能性もあり、米国経済のアップサイドリスクとして目が離せない。

(オックスフォード・エコノミクス 在日代表 長井滋人)