震災発生リスクが高まっている。「万が一のときも、家族の命と財産を守る住まいを手に入れたい」と願う読者のために、これだけは知っておきたい基礎知識を連載する。指南役は一級建築士で不動産鑑定士、不動産コンサルタントとして活躍する田村誠邦氏。第1回目は建物の構造に着目する。
特徴を知って選ぶのがベスト
耐震構造、制震構造、免震構造ではどれが一番地震に強いのだろう。
田村誠邦氏は「よく聞かれるのですが、一概には断定できません。それぞれの構造の特徴を知り、何を大事にするかによって選びます」と、構造の違い(図1参照)を説明してくれた。
耐震構造は、壁や梁などの骨組みを頑丈にして地震の揺れに耐える技術。販売されているマンションの大半がこの構造だ。
制震構造は一般的に耐震構造と組み合わせて使われる技術で、地震の揺れを制震ダンパーなどの制震装置で吸収することで建物の揺れを抑える方法。
免震構造は地盤と建物の間(中間階免震もある)に積層ゴムなどの免震装置を入れ、建物に伝わる地震力を軽減する技術。一番歴史が浅いが、室内の揺れを抑える効果は最も高い。
「中越地震の際、震源地に近い小千谷市の免震構造の老人保健施設で、食器棚の皿も割れなかったと聞いています」
今回の東日本大震災でも、宮城県内の制震・免震マンションの被害は耐震構造のものより少なかった(図2参照)。制震・免震マンションに築浅物件が多いのは事実だが、一定の効果が実証されたと言っていいだろう。