もちろん、人生の最終段階にない人に対しては、元の生活に戻れるように集中治療が必要です。しかし、最期が近く意識がない人に、呼吸のための管を挿入したりすることは、その人の尊厳を尊重したものとは言えないでしょう。本人は苦しいうえ、家族は感謝の言葉を伝えることもできなくなります。検視になると警察が呼ばれることもあり、穏やかな看取りとは程遠いものになります。
家族以外の人が慌てて救急車を呼ぶケースも少なくありません。在宅医から「そろそろです」と言われたときは、関係者としっかり情報共有して救急車を要請しないことが大切です。
Q4 通常の訪問診療のほか、耳鼻咽喉科や皮膚科の往診や訪問診療も受けられますか?
A 地域に対応する医師がいれば、受けられる
かかりつけの在宅医による訪問診療のほか、歯科、耳鼻咽喉科、皮膚科、眼科など、別の診療科(医療機関)の往診や訪問診療を受けることは、制度上認められています。
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ただし、耳鼻咽喉科や皮膚科などの医師が、すべて訪問診療などに応じているとは限らず、地域によっては難しいことも考えられます。また、自宅ではおこなうことのできない検査や治療もあります。
別の診療科の受診が必要なときはかかりつけの在宅医に相談してみましょう。例えば、耳鼻咽喉科医の訪問で有益なのは、耳垢で耳が塞がる耳垢栓塞です。耳垢を取り除くことで聞こえがよくなり、認知症だと思っていたら難聴の影響だったという例もあります。
また、皮膚科の病気で治療が難しいケース(例えば帯状疱疹、ヒゼンダニが皮膚の角質層に寄生する疥癬、爪の水虫である肥厚性爪白癬など)で、皮膚科医の訪問やオンライン診療、褥瘡専門看護師の訪問が有益なこともあります。
(文/山本七枝子)
※週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん2024年版 在宅医療ガイド』より
※AERA dot.より転載