「どうでもよくなる」への処方せんは?
ここで必要なのは、感情的な自責ではなく、「なぜ自分は自傷行為をおこなってしまうのか?」という理性的な思考です。
人間も生き物ですから、自分を傷つけたくないですし、死にたくもありません。
それにもかかわらず、自己破壊を繰り返してしまうのは、「生物学的なメリット」があるからです。
自己破壊とは、自己理解のための過程、要するに「自分リセットのスイッチ」なのです。
お酒を飲んだり、ムダな時間やお金を使ってしまったり、軽い自己破壊は誰でもやってしまいます。
そうして、日々の疲れやしがらみからリフレッシュしているのです。
スポーツをして汗をかくことと同じで、脳に非日常的な刺激を与え、同じように自分リセットのスイッチを押しているのです。
だからこそ、そういう瞬間は、
・自分をいたわってあげること
が必要になります。
自己破壊型になる瞬間は、「リフレッシュ法が他人と少し違っている」というようにとらえることから始めます。
ただ、「自分を満足させる」というのは簡単なようで難しいことです。
人間は強い刺激に慣れてしまうと、弱い刺激が気にならなくなってしまいます。
ストレスが強すぎる生き方をしていると、脳に強い刺激がつねに与えられている状態が続くため、現実感や自分が自分であるという感覚が薄れてしまいます。
そして、そのストレスから逃れるため、
「リフレッシュのために自己破壊をする」
という行きすぎた行為になってしまうのです。
まずは、自己破壊そのものが悪いのではなく、「やり方が少しマズいだけだ」という軽い認識を持つことです。
たとえばダイエットは自分の欲求との闘いで、意思の強さだけで成功するものではありません。
ここで必要なのは、仲間や友人と、ストレスを別のことで発散させるということです。
自分をリセットするスイッチを食事以外で、1つ、また1つと、増やしていくのです。
「これしかない!」と狭い視野になることなく、友達から聞いたストレス解消法を軽い気持ちで試してみることが大事です。
そうやって、少しずつ自分を変えていきましょう。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』より一部を抜粋・編集したものです)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医。
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。