空が青い理由、彩雲と出会う方法、豪雨はなぜ起こるのか、龍の巣の正体、天使の梯子を愛でる、天気予報の裏を読む…。空は美しい。そして、ただ美しいだけではなく、私たちが気象を理解するためのヒントに満ちている。SNSフォロワー数40万人を超える人気雲研究者の荒木健太郎氏(@arakencloud)が「雲愛」に貫かれた視点から、空、雲、天気についてのはなしや、気象学という学問の面白さを紹介する『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』が発刊された。斉田季実治氏(気象予報士、「NHKニュースウオッチ9」で気象情報を担当)「空は「いつ」「どこ」にいても楽しむことができる最高のエンターテインメントだと教えてくれる本。あすの空が待ち遠しくなります」と賛辞を寄せている。東京大学教授の西成活裕氏に本書の読みどころを寄稿していただいた。
読後に空がより美しく見えてくる
飛行機で移動する時の楽しみの一つが、窓の外の雲海を見ることだ。
真っ青な空が上空に広がり、下には触ったら気持ち良さそうに見える真っ白な雲がフワフワと漂っている。まさに雲をつかみたくなる瞬間だが、その雲を研究している気象学者の渾身の一冊が本書だ。
タイトル通り、本当に読後に空がより美しく見えてくる本で、また普段あまり見かけない変わった形や色の雲、虹、太陽などのカラー写真がたくさん掲載され、「写真集」として見ているだけでも楽しい。
レンブラントと「天使の梯子」
そうした珍しい現象は、古来よりたくさんの人の関心をひき、そして様々な名前で呼ばれてきた。例えば雲の間から伸びる光の筋は「天使の梯子」と呼ばれ、オランダの画家レンブラントが得意としていたモチーフだ。
そして日の出前や日の入り後の「薄明」の空は、暁や東雲、黄昏など、様々な名前で呼ばれ、私の好きな新海誠監督のアニメ映画でもそうした風景が美しく描かれていた。
素敵な映像だと思っていたら、なんとその映画の気象部分の監修が著者であった。
「なぜ」という知的好奇心を満たす
それではなぜ夕焼けは赤く、普段見上げる空は青いのか。
本書はこの「なぜ」という知的好奇心も十分に満たしてくれる。空は物理学の巨大な展示場といえる。光と水と熱が織りなす不思議な景色が壮大なスケールで目の前に展開されている。そのどれもが物理の法則で動いていて、そこには矛盾はない。
そして風呂場やコーヒーカップの湯気まで、すべて同じ法則で動いているのだ。手のひらサイズから地球まで、スケールが全く違っても、同じように成り立つのが物理法則の面白いところだ。
あらゆる人にお勧めしたい
だから本書も身近な例えを使った説明がたくさんあって抜群に分かりやすい。さらに可愛いイラストがついた説明図もたくさんあり、理解を助けてくれる。
とにかく誰かに話したくなるネタが満載で、例えば積乱雲の上部に平らな「かなとこ雲」があると天気が急変する可能性がある、など、実用的な知識も身につけられる。また、気象は防災、ビジネス、交通など多くの事と関連している。
本書はあらゆる人にお勧めしたい素敵な一冊だ。
評者:西成活裕(にしなり・かつひろ)
東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授、渋滞学者。工学博士。車、人、インターネットなどの流れに生じる「渋滞学」やビジネスマンから家庭の主婦の生活にある無駄を改善する「無駄学」を専門とする。『渋滞学』(新潮選書)で講談社科学出版賞と日経BP・BizTech図書賞を受賞。その他の著書に『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく高校の数学を教えてください!』(かんき出版)などがある。