【誤解7】
転職時に、拠出限度額が変わらなければ手続きは不要
いいえ、転職時に勤務先情報の変更手続きが必要です。iDeCoは働き方によって、また勤務先の企業年金制度などによって拠出限度額が変わります。加入する際に事業主から限度額に関する証明書を受け取り、他の書類と一緒に提出したと思いますが、自分の限度額がいくらで、現状の積立額に問題がないと証明してくれているのは勤務先です。
ですから、勤務先が変わった場合は、たとえ拠出限度額が変わらないとしても契約先金融機関に連絡して必ず登録変更手続きを行ってください。この変更が行われないと、限度額が正しいかどうか確認するすべがないため、登録変更の督促(さいそく)が来たり、最悪の場合は積み立てがストップしたりしてしまうので注意してください。
【誤解8】
初心者なのでリスク限定型投資信託がよい
そうは思いません。「リスク限定」というと、安定的に増やしてもらえるイメージを抱く人が多いと思いますが、このタイプの投資信託は価格のブレであるリスクが一定範囲に収まるように、相場の動きや見通しに合わせて株式や債券などの組み入れ比率を機動的に変化させて運用する商品です。
運用として任せていることが多いわけですから、運用コストである信託報酬が高くつくことが多く、また価格変動の要因も複雑で、初心者が正しく理解するのは難しいためあまりお薦めできません。
むしろリスクをそれほど取りたくないのであれば、iDeCoの運用資産全体の10〜15%程度(自分でリスクを取れる範囲内)を低コストの株式インデックス型投資信託(パッシブ運用の投資信託)に投資して、残りは定期預金にする方が、リスクを抑える効果はリスク限定型投資信託と同程度で運用コストは何十分の一にもなります。
【誤解9】
商品を指定しなくても、金融機関があらかじめ決めている商品で運用を任せればいい
いいえ、自分で運用商品を決めてください。iDeCoでは加入者が運用指図をしなかった場合に、掛け金を預け入れる商品としてあらかじめ決められている商品(「指定運用方法」と言われます)で運用することも可能です。しかし、その商品での運用結果は自らが負うことになります。
指定運用方法が定期預金の場合は、現状の金利では増えることをあまり期待できません。また投資信託の場合も、値動きの要因がよく理解できないような商品に大切な老後資金を預け入れるのは、将来受け取る際に売るという決断を自らしなければならないことを考えると適切な選択とは言えません。
iDeCoで運用商品を選ぶことこそが、一喜一憂しながらその商品や投資への理解を深めていく、資産運用のスタート地点に立つことになります。商品の変更はいつでもできるので、チャレンジしてみてください。
【誤解10】
iDeCoは手数料がかかるから不利だ
口座管理などの業務に支えられてiDeCoの制度運営はなされているわけですから、それに対して手数料がかかるというのはある意味当然です。
NISAでは口座管理料が無料となっていますが、これは本来かかっている非課税口座の管理・運営コストを、金融機関として違う形で回収する必要があるわけで、手数料が多く入る他の商品の提案やグループ企業の他のビジネスの利用の推奨などが当然のことながら行われます。
iDeCoでも、金融機関としての手数料を無料としているところではそういう懸念は否めません。
しかし【誤解5】でも説明したように、iDeCoは法令で特定の金融商品を薦めることは固く禁じられていますし、個人情報についても「業務遂行のため」と利用範囲が厳格に定められています。つまり、個人情報の取り扱いについて本人が同意していない限り、金融機関から不要な営業攻勢を受けることはありません。
iDeCoで拠出の都度などにかかる手数料も、所得税・住民税を負担している人であれば、掛け金全額の所得控除によって十分にカバーされる金額です。必要経費を払った上で、誰でも老後資金の準備を始めやすい制度となっています。