3. 岸田内閣が「スタートアップ創出元年」を宣言したことで、省庁や自治体、大企業も本格的に「スタートアップ」に意識を向ける年になったと感じています。

2019年からまん延したコロナも同様ですが、環境変化に伴うゲームチェンジの重要性を認識し、必要であれば自社の取り組みを大きく変えることは事業成長を遂げるうえで本当に大切です。キャッシュ・コストコントロールに優れた起業家は、取り組みを大きく変えることで「冬の時代」を耐え、現在芽生えつつある将来に向けた「プラスの萌芽」を獲得し成長していく。将来振り返って、「スタートアップのタイプが変わった1年」だと感じるような気がしています。

2022年に注目した・盛り上がったと感じる領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。

注目したキーワードは「VTuber」です。

6月、VTuberグループ「にじさんじ」の運営をおこなうANYCOLORが、創業5年ほどで東証グロース市場に上場しました。2022年4月期の通期売上高約142億円、当期利益約28億円と業績の急成長はもちろんすごいのですが、私がいちばん着目しているのは、海外でも熱狂的な支持を得ながら、新たなグローバルビジネスを手がけていることです。

田角CEO(代表取締役社長CEOの田角陸氏)は、学生起業して現在20代。こうした従来の枠を超えた次世代の起業家や、新しい大型・グローバルビジネスが日本から次々に生まれてくることを期待しています。

2023年のスタートアップシーンや投資環境はどのように変化すると予想しますか。

スタートアップの資金調達は、二極化が進むと見ています。

また数十億円以上の大型資金調達に成功した企業の一部が、未上場の段階から海外への商品・サービス提供を始めることも期待しています。海外で業績をつくれる=海外でも支持を得た商品・サービスは国内でも大きく着目され、それが当該スタートアップに良い循環をもたらすとも考えています。

2回目の起業となるシリアルアントレプレナーや、大企業・上場会社からカーブアウトした起業家が、こうした大型資金調達・海外展開をけん引していくようになるとも予想しています。

2023年に注目する・盛り上がると考える領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。

ヘルスケア、社会インフラ、エンタメ領域が盛り上がりを見せると予想しています。

ヘルスケアは医療費の高騰や健康意識の高まりを引き金に、従来の人・紙・対面ベースのアナログ的やりとりでは充足できない部分にキャッシュ・人などの経営資源が集まり、新しいやり方、つまり新しいビジネスが発現するように感じています。

社会インフラは、昭和に整備された道路や橋、都市インフラの経年劣化にともなう修繕や入れ替え、新たなサービス・検査方法の導入がメイン。大きな市場でもあり、これまでにない枠組みでビジネスをとらえられる企業が躍進していくと思っています。