顧客からは月額固定のサービス利用料と売上連動費(ネットスーパーの売上のレベニューシェア)を受け取るビジネスモデル。これまでにイトーヨーカドーやライフ、スギ薬局、薬王堂など複数の小売企業を支援してきた。

「(ビジネスモデルの特性上)『それぞれの契約から今後発生する売上』をある程度予測できます。将来の返済原資のようなものが一定程度確保されている状態なので、それを踏まえた上で借入金額や条件の話がしやすいです」(山田氏)

10Xの場合は特に大手食品スーパーであるライフとの取り組みが大きい。ライフと実績が作れれば、地方のスーパーでも同じような成果を期待できる。既存顧客との実績や満足度、その取り組みの再現性などは、デットファイナンスを進めるにあたっても評価のポイントになったという。

静岡銀行や山梨中央銀行とは「(Stailerが)地方企業に広がり始めている」点においても親和性が高い。現在、Stailerの導入先の約半数は都心以外で事業を展開するスーパーなどの小売店。すでに今年中のサービスローンチが決まっている5社のうち4社も都心以外の企業だという。

地銀にとってはStailerが地域の小売企業のDXを支援するツールにもなりうる。10Xとしても地銀と連携を深め、現地の企業との接点を増やしていく構えだ。

地銀や新興プレーヤーもベンチャーデットに進出、選択肢が広がる

デットファイナンスの選択肢が広がっている背景には、金融機関側とスタートアップ側のそれぞれでいくつかの要因が考えられる。

まずは資金の出し手となる金融機関側の変化だ。「徐々にではあるが、銀行や地銀などが新たな収益機会としてスタートアップへの融資を前向きに検討し始めている」(山田氏)ことに加え、新興のデットファンドやフィンテック企業も出てきた。

結果として競争環境が生まれつつあり、金融機関側のリスクの取り方やコミュニケーションも変わり始めているというのが山田氏の見解だ。

上述した静岡銀行は地銀の中でもデットファイナンスに積極的に取り組む。直近では山梨中央銀行らとコネクテッドロボティクスに対して融資を実行した。SDFキャピタルは2022年にスタートアップのみを対象にしたデットファンドを立ち上げ、約半年の間で10Xやテックタッチ、ペイトナーなど6社に資金を提供している。

同じく10Xに資金を提供したFivotではベンチャーデットのほか「レベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF : 将来の売上を売却し、成長に必要な資金を確保できる仕組み)」と呼ばれる資金調達サービスを手がける。Yoiiも同様にRBFを展開するフィンテックスタートアップだ。