アイカサが目指すのは、使い捨てされるビニール傘をゼロにすること。ビニール傘1本に使われるプラスチックを含めた資源量は約265gであり、CO2に換算すると1本あたり692gのCO2が排出されることになる。年間8000万本が廃棄されるとなれば、CO2排出量の合計は約6万トン。使い捨てビニール傘が環境負荷につながっているという啓蒙活動も、アイカサの重要な役割だという。
「“傘を借りる”という概念が広がれば、ビニール傘を買うのは環境資源としてももったいない、と思う人が増えていきます。“借りる”が“買う”に完全に取って代わるためには、全ての駅にアイカサがなければ難しい。まずは、雨が降るたびに大量に傘が消費される一都三県で、全駅設置に向けて動いていきたいです。そのために、例えばニュースのお天気コーナーでの発信と連携するようなことができたらと思います。『夕方に雨が降ります。傘を持っていったり借りたりして、エコに過ごしましょう』などと一言添えるだけで、じわじわと、私たちの意識が変わっていくはずです」(丸川)
資源あたりの生産性を高め、ものを長く大切に使う社会を創りたい
環境問題は、待ったなしの状況にある。石山氏は、「大量生産・大量廃棄型のビジネスモデルや消費スタイルを維持したまま、廃棄やゴミの量を削減していく考え方では、到底間に合わない」と指摘する。
「産業、そして社会全体がサステナブルな方向へシフトしていく。シェアリングエコノミーはビジネスモデルそのものがサステナブルに直結しています。アイカサをはじめ、もののシェアリングの普及が徐々に進んでいる今、これからはBtoBのシェアリングにも注目しています。製造業企業間で機械をシェアする『シェアリングファクトリー』のようなサービスもそのひとつ。さまざまな領域にシェアの概念が広がっていってほしいと思います」(石山)
シェアリングエコノミーの広がりに向け、社会はこれからどのような連携を深めていけばいいのか。石山氏は、「土台となるプラットフォームビジネスの安全・安心な環境整備、機能アップデートを支える事業が重要だ」と話す。より精度の高い本人認証や、信用スコアリング、国際的な決済システムなどは、まだまだ国内では成長が進んでいない分野だ。
アイカサにおいても、普及をさらに加速させる上でまだまだ課題がある。その1つが地下空間へのスポットの設置だ。地下駅や地下街は、そのエリアを民間企業や国、自治体のどこが管轄しているのかが複雑に関わりあっている。そのため、設置申請が通るまでの確認作業に膨大な労力がかかるという。「一緒に進めていこう」と、複数の管轄組織が動いていくような柔軟性は、これからのシェアリングエコノミーの活発化に向けて重要なキーになると丸川氏は話す。