社員全員からアイデアを募集

当初、山光が中心になってオリジナル商品のアイデアを出していた。しかし、ひとりの発想力に限界を感じ、創業5、6年目から社員全員に企画を求めるようになった。本社オフィスのほか、秋葉原に小さなお店も出していたため、全員からアイデアを集めるために社内のネット掲示板に投稿するかたちにした。

それでも最初はなかなか投稿が集まらなかったため、「もっと投稿してほしい」と訴えるだけではなく、褒賞を設けた。自社企画の商品として採用されたらA賞1万円、海外からの調達品として採用されたらB賞5000円、いいアイデアならC賞500円。お小遣い程度だが、実際に商品がヒットすれば人事評価に反映される。アイデアを出しやすい雰囲気作りにも気を遣った。

「面白くて役に立つ商品を世の中に広めてハッピーにしたいという想いはみんな同じなので、自由活達にやりとりできる環境が重要です。そのため、アイデアに対してNGを出す時は理由を説明するし、僕は自分が正解だとまったく思っていないので、反論もどんどんしてもらいたいと常に伝えています。例えば僕が過去の経験から判断してNGを出しても、いやいや、社長はわかってない、今はこういう世の中だからこの商品が売れるんだってロジカルに反論があって僕が納得すれば、GOサインを出しますよ」

こういったハード、ソフトの仕組みを取り入れることで、投稿されるアイデア数が増えるだけでなく、社内のコミュニケーションも活発になった。それと比例するように売り上げも伸び、創業10年目には約9億円に達した。

ブレーキを踏んでいた足を外す

右肩上がりの成長が伸び悩むようになったのは、スマホが日常の中で使われることが当たり前になり、パソコンが以前ほど売れなくなった2015年頃。時流に合わせてスマホの周辺機器も開発し、輸入販売も手掛けていたが、パソコンに比べるとニーズが小さく、売れるのはバッテリーやケーブルばかりになっていた。

スマホとパソコン、両方の周辺機器の市場縮小は、サンコーにとって逆風だ。その暗雲を振り払ったのは、ひとつの商品だった。

サンコーは2015年12月、台湾から輸入したハンガー型の乾燥機を発売した。これは、コンセントにつないだハンガーの裏側から温風が出て、洗濯物が早く乾くというアイデア家電だ。想定通りに売れたのだが、山光はこのハンガーにシャツをかけた時、袖や裾など服の端の渇きが悪いことが気になっていた。どうしたものかと考えていたある日、ふと思いついた。