今でもほとんどの顧客にとって「カミナシが現場で導入する最初のSaaS」だが、バックオフィス部門などではすでに何らかのクラウドサービスを活用しているところも出てきている。
「ある顧客では、カミナシを現場の従業員へ説明するにあたって『(人事・労務向けSaaSの)SmartHRと同じようなもの』だと伝えたそうなんです。(SmartHRで)簡単な操作で年末調整が終わるように、現場の業務が楽になると。その結果『確かにSmartHRは便利だったから』と一気にカミナシの活用に対する社内の意欲が増しました」
「この話を抽象化すると、バックオフィス部門などで擬似的にDXの成功体験を積んだ方々が増え、現場での(SaaSの)活用にも前向きになっている側面があるのではないかと思います」(諸岡氏)
30億円調達でマルチプロダクト化、「紙をなくす」の次なる挑戦へ
今後カミナシでは従来の「業務(Operation)」領域に加えて、「人(Employee)」や「コミュニケーション(Communication)」領域にも事業を拡張する方針だ。「まるごと現場DX構想」を掲げ、将来的には1つの画面上で現場のさまざまな課題を解決する“オールインワンサービス”を目指していくという。
プロダクト開発や組織体制を強化する資金として、Coral Capital、ALL STAR SAAS FUND、千葉道場ファンド、みずほキャピタルを引受先とした第三者割当増資により約25億円を調達。金融機関からの融資も含めて総額で約30億円を集めた。
新プロダクトの第1弾「カミナシ Employee」では、短期の時給労働者などフロー型人材の入退社手続きや管理にまつわる業務の効率化から始める計画。2023年中のリリースを見込む。
「カミナシとしては『ノンデスクワーカーの才能を解き放つ』というビジョンを掲げているくらいなので、事業規模としてもARR100億円、さらにそれ以上を目指しています。それを踏まえると、1つのプロダクトだけでは難しい。今後は隣接する領域へと拡張し、マルチプロダクト化を進めていきます」
「現場って、人の入れ替わりが激しいんです。『スキマバイト』など短期のアルバイトなども含めると年間数百人単位で人が入れ替わります。入退社手続きや人材管理の負担が大きいだけでなく、実はメンバーが稼働した後も、会社からメールアドレスの付与をしないことが多いため、情報の伝達に時間がかかる。これらの課題は『会社と従業員の情報のやり取り』がデジタル化されていないことが大きな原因です。まずはこの領域をテクノロジーを使って変えていきたいと考えています」(諸岡氏)