確定したと言っても過言ではない「ゲームオブザイヤー2023」

ゲーム内のシナリオを進めてエンディングに向けて進むのは、一般的なゲーマーの行動原理だ。戦闘の難易度は前作に較べて難しくなっているため、クリアを目指すのであればハート数を増やしながら挑むといいだろう。しかし、前述したようなウルトラハンドや、物理法則を利用した「あそび」を楽しみ始めると、果てしない遠回りを始めてしまい、いつまで経ってもゲームをクリアしない人も珍しくないのではないか。そんな懐の広さ、自由度こそが、ゼルダTotKの魅力だ。筆者にはゼルダTotKが世界各国の「ゲームオブザイヤー(年間最優秀ゲームの表彰)」を総なめしているであろう未来が見える。もっとも権威があると言われているイベントは、毎年12月にアメリカで開催されている「The Game Awards」。同イベントにおける最優秀賞である「Game of the Year」には、2022年はELDEN RING。もちろん、2017年にはゼルダBotWが選ばれた。

なお、本記事の冒頭で説明した「ゼルダTotK」に60点を付けた英GfinityのライターJosh Brown氏は、世界中のファンからTwitterを介して猛烈な非難を浴び、Twitterアカウントを非公開設定にした。60点という低評価がなければ、98点という歴代2位タイのメタスコアが付けられていたかもしれないという、ファンからの恨みを買ったのだろう。

最後に、任天堂オーストラリアがYouTubeで公開しているゼルダTotKのCMを見てほしい。疲れ果て、帰宅した男性サラリーマンが家のテレビでゼルダTotKをプレイする。帰宅中は無表情だった彼が口角を上げたり、真剣な表情になったり。自分のミスで溺れるリンクを見て「くすっ」と微笑む場面もある。前述したマジックハンドによる工作で失敗し、試行錯誤の上で成功。昨日まではただの移動でしかなかったバスの通勤時間が、Nintendo Switchを持って出勤したことで戦闘シーンを楽しみ、笑顔になるサラリーマン。バスの車窓から見える見慣れた風景も、昨日までとは違って見えるようになった、という展開だ。

 

このCMに、ゼルダTotKの良さが詰まっているように感じた。筆者も、日常生活で通りかかる風景を見て「この壁なら、握力ゲージがなくなる前に登りきれるかな」などと考えている自分の思考に気付いたとき、すっかりゼルダTotKの虜になっていることを自覚した。NHK連続テレビ小説『らんまん』オープニング映像のような花や草に溢れたハイラルの大地へ、今宵も出かけたいと思う。