「(出資元である)Mistletoe自体が固定のオフィスを持たず、従業員もいない形態です。エバーブルーテクノロジーズも同様に、リモートかつパートタイムでプロジェクトに参加する形を取っています」(野間氏)
しかも「メンバーには参画する時間や成果をコミットさせない」という方針を打ち出す野間氏。これには社内からも反対があったそうだが「このプロジェクトの求心力で(組織を)持たせたい。面白い、楽しいというモチベーションでやってほしい」という野間氏の強い希望から、一部の外注を除き、基本的にはオープンソースプロジェクトと同様の分散型開発を行っているそうだ。異業種の専門家を巻き込み、働き方もバッググラウンドも異なるメンバーでチームを構成。専門性の高い人材がフェローとして参画する。
例えば、ヨットのワールドカップとも呼ばれる国際ヨットレースのアメリカズカップに技術スタッフ、主要デザインメンバーとして幾度も参加し、レーシングヨットの設計や大型商船の船型開発などを手がける金井亮浩氏や、シンガポール国立大学スマートシステム研究所シニアリサーチフェローとして、ヒューマンコンピュータインタラクション、メディアアートなどの研究に従事し、カラス型ドローンを用いた「カラスと対話するプロジェクト」やセーリング効率化ガジェットの「SmartSail project」などを手がける末田航氏といったメンバーがフェローとして、このプロジェクトにジョインしている。
代表はソニー出身の開発者
野間氏自身はソニー出身。退職後もソフトウェアやインターネットサービス、ネットメディアの開発を主に手がけてきた人物だ。「ものづくりを刺激したいと考えたときに、自分はネット(のプロダクト)には強いが、フィジカルなモノは作った経験がほぼなかった。そこで、ものづくりに取り組めるコミュニティを立ち上げたいと、FabCafeに持ちかけて、協力を仰ぐことになった」(野間氏)
2019年3月、ものづくりの場や機器を提供するFabCafeの協力を得て、エバーブルーテクノロジーズが立ち上げたのが、AIデザインを活用した自動操船ヨットのデザインプロジェクト「A.D.A.M(Ai Design Autonomous Multihull、アダム)」だ。A.D.A.Mには、カーデザイナーや、3Dプリンター企業に所属する人、飛行機づくりに携わる人など、さまざまな人が集い、コンセプトモデルを提案。コンペのような形でチームごとにプロトタイプデザインを開発していった。