シリーズ「オペマネの思考法」の第1回では、戦略を立ててから事業プロセスを考えるのではなく、事業プロセスから戦略を組み立てる思考法を紹介した。第2回では、SWOT分析の誤用で見受けられる自社の強みを前提とする戦略立案は、現状維持の論理展開であること、一方、機会を機敏に利用し、脅威に真正面から向き合うことができるマイケル・デルの問題解決の思考法は、論理展開の向きが逆であることを解説した。SWOT分析で本末転倒しないようにしていただきたい。
今回は、ものづくりと技術力という強みをなんとか生かして、脅威に対処しようとしてうまくいっていない日本の電機メーカーを例に、サプライチェーン・マネジメント(SCM)という事業プロセスから考える思考法を適用してみる。SCMというと、電機メーカーより上流の供給サイドの話に限定されがちだが、下流のサプライチェーンを考えることから始めなくてはならない。
家電量販店は憂鬱な場所
家電量販店に行くと憂鬱になる。意味不明の商品の陳列、山積みは、ドンキホーテを彷彿させる。何かこの中に宝ものが埋まっているというのであろうか。どのメーカーのどの製品が私の求めているものか、また、その製品の使い方をだれが教えてくれるのだろうか。家電量販店のターゲットは、新居を構えた家族か、家電オタクだけなのか。
先日、10年使ってもまだ十分使えるプリンターが紙詰まりを起こし、メーカーは修理部品がないから何もできないということで、しかたなしに量販店に行って別のメーカーの新品を物色した。量販店の店員にプリンターの紙詰まり、補修部品についての質問をしても、答えていただけなかった。あまり商品については知らないようである。どうも量販店というところは、お客さんの方が先に商品について調べておいて、棚にある商品について、値段のみを交渉するというビジネスモデルをとっているらしい。
家電メーカーにとっても量販店は憂鬱な場所であろう。せっかく、ものづくりと技術力を結集して、つかみづらい消費者の志向を想定して造ったものをそのように売られては。電気製品のコモディティ化(価格のみでの競争となる汎用品化)が、量販店で決定的なものとなっていると言っても過言ではないだろう。