PidPortのビューワーでデジタルデータを閲覧した時の様子

別のケースでは、デジタル化が“ひとり病理医”の支援に繋がった。従来は数日おきに実物のプレパラートを大学病院に持参して、オフラインでコンサルテーションを受けていたそう。その際にメドメインのイメージングセンターやPidPortを使うことにより、オンライン上で一連のやり取りをスムーズに完結できるようになった。

「今は『デジタルならではのメリット』を最大化できるように開発を進めています。(プレパラートが)デジタルデータになれば、従来はオフラインで何とかするしかなかった病理診断や業務がウェブを介して迅速にできるようになる。特にコロナの影響でそのニーズが加速しているので、ビューワー機能の改善や遠隔診断時における複数施設間での連携機能などを中心に、顧客のフィードバックを踏まえてプロダクトをアップデートしてきました」(飯塚氏)

実際にサービスをローンチしてみると、当初は想定していなかったようなニーズも見つかった。PidPortは複数の製薬企業にも導入されているが、病院以外にも需要があることは先方から問い合わせを受けて初めてわかったものだ。

「製薬企業も自社で相当数のプレパラートを保有していますが、リモート環境で業務を進めることも増えている中でデジタル化の問い合わせをいただくようになりました。プレパラートをデジタル化したものは画像容量も大きく、普通のビューワーでは快適に見れない場合もあり、その先入観から従来はデジタル化を積極的に進めてこなかったという声も聞いています」(飯塚氏)

また一部では病理医以外の医者にも使われ始めている。プレパラートをデジタル化して「顕微鏡ではなくオンラインで確認したい」というニーズは病理領域に限った話ではないため、実際に皮膚科医が利用していたり、腎臓内科から問い合わせがあったりもするそうだ。

日本ではデジタル化の基盤整備に注力

今回調達した資金は主にプロダクトの研究開発とサービス拡大に向けた、エンジニアやセールスを中心とする人材採用の強化に用いる。

病理AIの研究開発、オンラインストレージ・遠隔診断システムのアップデートに加え、現在国内に3拠点あるイメージングセンターにも投資をする計画だ。日本をはじめとした国の薬事申請に向けた準備にも引き続き取り組む。

飯塚氏の話では、精度の改善や対象臓器の拡張などはもちろん必要になるが、海外で病理AIを展開する中でも「このマーケットに関してはAIが大きなソリューションになり得る」と手応えを掴み始めているそうだ。国内外で病理AIに対する要望も大きいという。