当時は特に2つのビジネスに注力していたものの「1つ目はそもそも商品が売れず、2つ目は商品は売れたもののビジネスとしてなかなかスケールしませんでした」(近藤氏)。それまではデザインの力でなんとかなると思っていたが、この経験を機にビジネスを学ぶべく、デザイナー職の内定を辞退して新しい道に進むことを決めた。

近藤氏が最初に選んだのはスタートアップ支援や大手企業の新規事業開発のサポートに取り組むcreww。同社で経験を積んだ後にリクルートに転職し、全社の組織開発や大規模プロダクトのUX改善などに取り組んだ。

転機となったのは、リクルート時代に副業で「産廃大手の基幹システムの改善」を支援したこと。その際にIT化が遅れている業界で労働環境の面でも改善の余地があること、またITを活用することで解決できる課題がたくさんあることを実感したという。

業界全体が同じような課題を抱えているのかを調べるため、1年間に渡って全国の事業者をリサーチ。時には作業着を着てゴミ回収業務にも関わるなど、自身で現場を体験しながら業界の解像度を高めていった。

「もともと自分で事業を立ち上げようと考えていて、いくつかアイデアも試していたんです。その中でも廃棄物の問題は解決できれば社会的にものすごくインパクトが大きい上に、(ITを上手く活用することで)解決できそうな自信も持てたので、この課題解決にフルコミットすることを決めました」(近藤氏)

プロダクト開発においては、ITに慣れていないスタッフでも使いこなせるようにUIUXにこだわった。極力タイピングをしなくても済むように、プルダウン形式で入力が進む設計を採用。ドライバーへの気遣いなど、細かい配慮ができるようにAIが出力した配車計画を配車係が修正できる仕組みも作った。

配車アルゴリズムは、NECの研究所にて機械学習や数理最適化に関する理論研究と最適化を使った複数の新規事業開発に携わっていたCTOの矢部顕大氏が主導。ビジネス面でも産廃業界で16年に渡ってシステム導入のセールスをやってきたメンバーのサポートを受けながら体制づくりを進めている。

ゆくゆくは受発注のオンライン化や処理の効率化にも対応

従来の課題とそれに対するファンファーレのアプローチ
従来の課題とそれに対するファンファーレのアプローチ

今年9月に予定している正式ローンチに先立ち、ファンファーレでは3社に対して配車頭のPoC(実証実験)版を提供しながらプロダクトの検証を行ってきた。

ある事業者ではベテランから新人の配車担当に変わって配車効率が落ちていたところ、配車頭を用いることで慣れていないスタッフでも効率的な計画を作れるようになった。別の所ではAIによる配車計画をもとに業務を進められる環境が整ったことで、担当者の負担が減って退職の懸念がなくなった。同時に新たなスタッフの採用ハードルも下がり、経営基盤の安定化にも繋がったという。