「日本人は膣の中に入れる生理用品に対し、すごく抵抗があることがわかりましたし、若い世代はタンポンを試したことがない人も想像以上に多かったんです。それを踏まえ、何を開発するか考えたとき、私自身も過去に使ってみて快適だった経験があったことから、第1弾の商品として吸水ショーツを開発することにしました」(石井氏)

また、石井氏は約150人の女性たちに対して、生理期間にどのような悩みを抱えているのか、どういったデザインが良いかなどのアンケートやヒアリングを実施。その声をもとに商品の開発を進め、さらには「BLAST」の読者など100人にモニターとしてサンプルを使ってもらい、試行錯誤を繰り返した末、5月末にNagiをローンチした。

漏れの不安がなく、行動の制限がなくなった

実際、Nagiを発売後、購入した女性たちからは「初めて生理期間が楽しみになった」という声がいくつも寄せられている、と石井氏は話す。今回のラウンドでBLASTへの投資を担当したANRIのシニアアソシエイトである江原ニーナ氏も、Nagiのいちユーザーだった。

生理期間中、女性たちは経血漏れを気にすることから運動ができなかったり、経血で汚れないか心配で着たい服を着られなかったり、行動に制限がかかってしまう。だが、江原氏は「Nagiを使ってみると経血漏れの不安から解放され、行動の制限を感じなかった」と言う。

「吸水性などNagiの機能性はもちろん良いのですが、それ以上にNagiを使うことで生理期間中の行動が制限されず、安心して過ごせることに驚きを覚えました。これはプロダクトの機能性とは別で、女性たちに大きな価値を提供していると感じたんです」(江原氏)

ANRIシニアアソシエイトの江原ニーナ氏

Nagiのような吸水ショーツをはじめとした、女性の健康問題をテクノロジーで解決する“フェムテック(FemTech)”市場はここ数年で急速に盛り上がってきており、2027年にはグローバルで5兆7000億円の市場規模になると言われている。

日本でも最近になりフェムテックという言葉を耳にする機会は増えてきたが、まだ女性の悩みは根強く残っており、その悩みを解決するプロダクトの数も少ない。そうした中、強い思想を持って事業を展開する石井氏に可能性を感じ、「投資を決めた」と言う。

「人類の半分が抱えている課題であるにもかかわらず、まだ負が多く陽が当たってこなかった市場に対して、熱量の高いコミュニティと共に検証を重ねた機能性の高いプロダクトを展開している。今後、マーケットが伸びていくことも予想されていますし、また石井さんのように強い思想を持っている人は稀有です。Nagiであれば、プロダクトを通して女性をエンパワメントする世界が実現できると思い、すぐ投資したいと思いました」(江原氏)