紛争地で動けなくなった幼子をハゲワシが狙っているのを捉えた写真で(ケビン・カーターのピューリッツァー賞受賞作)。「カメラマンはすぐにこの子を助けるべきだった」という批判を含めた議論が、世界中で巻き起こっていく様子に、「1枚の写真が語る物語はとても饒舌で、これほどまでに人の心を揺り動かすのか」と感じました。

ですから、私が演劇を志したのも、舞台が好きだったとかミュージカルファンだったという理由が先行したのではなく、「社会に対して伝えるべきことを表現する手段」として選んだのがその理由です。

例えば、演劇の業界に限らず、現代のこの国において女性はやはり弱者側の立場です。男性が感じたことがない怒りや疑問を感じてきた女性は多いのではないかと思います。そういった問題を、政治家は政治を通じて解決しようとするし、経済を通じて何かを変えようとする人もいる。私は演劇という芸術を通じて、社会に働きかけていきたいのです。

Photo:Gettyimages/Lingkong C / EyeEm

──同志社大学で政治を専攻した経歴ともつながるお話ですね。

高校時代には管弦楽に没頭していて、そのまま芸術の大学に進む選択肢もありましたが、 「ちょっと芸術に偏りすぎていたな。もう少し広く世の中を知らないとダメだな」と、政治学科に進むことにしました。大学では多元主義について考えるゼミに所属。「誰かが得をすると、同時に他の誰かが搾取されている」という構造を指すものです。