自分が何を書くかによって、すべての物事が決まる。オリジナル作品を生み出す時には、常にそんな孤独な重圧との闘いです。ただ、ずっと孤独であるわけではなく、さまざまな役割を持つクリエイターたちとの共同作業で作品は形を成していきます。そのプロセスの中に喜びはたくさんありますね。

終演後に、お客様のアンケート回答を1枚1枚読みながら、「ああ、少しでも力になれたんだ」と思えた時には、すべての苦労が報われます。私たちの仕事は、お客様の心に響いてやっと成り立つものなので。

──コロナ禍においては、「芸術の存在価値」が問われてきました。小林さんは、「演劇の価値」とは何だと考えますか。

この半年ほどの混乱の中、芸術は「不要不急」だと言われ続け、国が芸術をどのように捉えているかも知らしめられたことで、随分と悲しい気持ちにもなりました。でも、価値が理解されていないからこそ、私たちがもっと頑張らないといけないのだという気持ちも奮い立ちました。

私が考える「演劇の価値」とは、演じる者同士の心の行き交いを、すぐそばで観る人たちが感じられることです。演じる人が1人いて、観る人が1人いれば、演劇は成立する。これは人類が地球に誕生して以来、変わらないコミュニケーションの原型ですし、突き詰めて言えば「あなたがいるから、私がいる」という関係性。人間だけが味わえる関係性を、最もダイレクトに感じられる芸術。それが演劇ではないかと私は思います。