「東京は人口の多さで言うと、我々が展開する数々の都市のなかでも最大規模。すでにアテネ(ギリシャ)、テルアビブ(イスラエル)やベルリン(ドイツ)などの都市でサービスを提供していますが、東京の人口はそれらの都市の人口を足した数よりも大きいのです」(クーシ氏)
編集部注:東京都の人口は1400万人(2020年)アテネの人口は約300万人(2018年)、テルアビブの人口は約45万人(2016年)、ベルリンの人口は約375万人(2018年)
地方都市からの参入で掴んだ、東京での勝算
大都市・東京でのサービス展開に先駆け、Woltは日本の地方都市で試験的にサービスを提供してきた。2019年10月に日本法人のWolt Japanを東京都に設立。今年3月には広島県・広島市でサービス提供を開始し、北海道・札幌市、宮城県・仙台市と提供エリアを拡大してきた。
「フランクにお話すると、我々は東京が進出が少し怖かったんです」──クーシ氏は笑いながらこのように経緯を説明する。
「ヨーロッパの都市の人口は数百万人規模です。広島市(2020年8月時点で人口約57万人)に進出する時も、決して『小さな街でサービス提供を開始する』という感覚ではなかった。まずは広島市のように、我々がすでにサービスを提供している都市に近い人口規模の都市で、オペレーションを磨きたかった。そして我々のサービスが本当に必要かどうかを確認したかったのです」(クーシ氏)
広島、札幌、仙台でのサービス提供で気づいたことは、Woltを繰り返し利用する「ロイヤルカスタマー」の割合が、サービスを提供する国の中でも顕著に多かったことだ。地方進出で手応えを感じたことで日本展開を本格することを決め、今回の東京に至った。
約100億円の資金投下で切り開く日本市場
前述のとおり、Woltは10月22日から東京でサービス提供を開始する。配達エリアは東京都渋谷区、港区、新宿区、目黒区、世田谷区、品川区の一部エリアで、今後は順次拡大していく。東京への進出を皮切りに、2年以内に国内100都市でのサービス提供を目指すという。そのために巨額資金を日本市場に投下する予定だ。
Woltは5月、既存投資家で海外ベンチャーキャピタルのICONIQ Capital、Highland Europe、83NorthとEQT Venturesに加えて、新規投資家のGoldman Sachsから約1億ユーロ(約123億円)を調達したことを発表した。
そして10月にはドイツに本社を置くフードデリバリーサービス「Delivery Hero」の共同創業者、ルーカス・ガドウスキー氏より、約750万ユーロ(約9億2400万円)の資金調達を実施したことを明かした。