Woltの累計調達額は約316億円。今後、その約3分の1である約100億円を日本市場での採用やマーケティングといった「基盤強化」のために投下する。Wolt Japanの社員数は現在約80人だが、これを半年で倍増させる計画だ。オンラインマーケティングを積極的に展開するほか、提携レストランや配達パートナー数の早急な拡大を目指すという。
競合優位性は「当たり前のことを、圧倒的なクオリティで提供すること」
Woltがここまで日本市場に注力しているのは、日本での「フードデリバリーのオンライン比率の低さ」にある。同社の説明によると、日本のフードデリバリー市場は2016年、アメリカ(約450億ドル)、中国(240億ドル)に次ぎ、世界3位の約180億ドル規模だった。だがその一方で、フードデリバリーのオンライン比率は2018年時点でも、たったの6%だったのだという。
「日本のフードデリバリーの市場は世界最大規模なものの、非常にトラディショナルです。テクノロジーに精通している国のはずなのに、電話で出前をとることが大半なのには違和感を感じます。我々が活躍する余地は大きいでしょう」(クーシ氏)
冒頭でも述べたとおり、日本のフードデリバリーサービスは非常に競争の激しい領域だ。Woltも競合サービスと同様、加盟店のメニューをアプリに掲載し、ギグワーカー(個人事業主)である配達パートナーがユーザーに料理を届けるという仕組みのサービスだ。先行する競合サービスに対する競合優位性はどこにあるのか。クーシ氏はその答えについて、「当たり前のことを、圧倒的なクオリティで提供すること」だと言う。
Woltでは、ユーザー、加盟店、配達パートナーからの質問に対して、1分以内に返答を行うチャットサービスを展開。そして交通ルールの厳守などを含む適性テストに合格した配達パートナーのみを起用する。
クーシ氏は「フードデリバリーサービスは非常に難しい事業です。顧客体験を向上させるための要素は数百個にも及びます。我々はその全ての要素をいかに完璧にするかということに注力しています」と話す。
「フードデリバリーは競争の激しい領域ですが、(ユーザーが)アプリを乗り換えることは簡単です。新たなユーザーを勝ち取り、日々アプリを選んでもらう必要がありますが、顧客体験が満足のいく内容であれば、結果はついてきます。値段は適切か、使いやすいか、加盟店は豊富か、など。これら当たり前のことを圧倒的なクオリティで提供していくことが重要です」(クーシ氏)