クーシ氏はここで、「顧客体験向上のための要素」について、配達パートナー向けの具体的な施策を紹介した。実はWoltでは、「この日のこの時間に配達業務を行う」と事前に宣言した配達パートナーに対して、たとえ1件の配達業務がなかった場合であっても、最低限の報酬を提供する制度を導入しているのだという。コストはかかるが、こういった仕組みで配達パートナーの確保や接客品質の維持を行っている。

競争の激しいフードデリバリー領域にWoltはどう挑むか

もう1つ、フードデリバリーサービスにとって肝心な要素がある。それは顧客が注文したいメニューを掲載しているかどうかだ。

Woltに登録する加盟店数は現在約1000店で、8月に加盟店数が3万店を突破したことを発表した出前館に遠く及ばない。Uber Eatsに至っても、需要が急速に増えたコロナ禍より以前の2019年6月の時点で、加盟店数が1万店を突破したことを明かしている。日本発スタートアップが提供するChompyは、有名店や個人店など、小さいながらもファンの付く飲食店を中心に独自路線での加盟店拡大を進めている。

LINEとの資本業務提携による約300億円の資金調達と「LINEデリマ」とのサービス統合を3月に発表した出前館、テレビCMで圧倒的な認知度を獲得しコロナ禍で急速にニーズが高まったUber Eats、楽天経済圏で独自のポジションを確立している「楽天デリバリー」──独自の強みを持った多くの先駆者がいるなかで、最後発となるWoltにはどんな勝ち筋があるのか。「当たり前のことを圧倒的なクオリティで提供する」という方針の裏にある、具体的な施策がその成否を左右することになりそうだ。