今後小型衛星の市場がさらに広がっていくことが予想される中で、エンジンはそのポテンシャルを最大限引き出すためのカギとなる存在。世界でも数十社がこの領域で研究開発を進めるが、Pale Blueでは最大の強みである「水を推進剤として用いる技術」を活用した独自のエンジンを提供することで、持続的な宇宙開発を後押しする計画だ。

そのための軍資金として、同社では10月21日にインキュベイトファンドと三井住友海上キャピタルを引受先とした第三者割当増資と⾦融機関からの融資により総額約7000万円の資金調達を実施した。

注目を集める小型衛星が抱える課題

近年、地球観測やIoTサービスを中心に小型衛星ビジネスが注目を集めている。小型衛星は質量100kg以下の衛星を指し、数千万円〜数億円のコスト感で短期間で製造できるのが大型衛星にはない特徴だ。

Pale Blue代表取締役の浅川純氏によると、中でも1辺が10cmの立方体ユニットから構成される「キューブサット」分野の成長が著しいそう。さまざまな民間企業だけでなく、NASAやJAXAといった宇宙機関から東京大学を始めとした大学まであらゆるセクターで研究開発が進む。

そのような背景もあって小型衛星市場は今後も伸びていくことが予想されている一方、世界的に宇宙デブリを抑制する動きも加速しつつある。小型衛星の用途を広げていく上では、この宇宙ゴミを含むいくつかの課題を乗り越えることが必須だ。

浅川氏は具体的な課題として、ほとんどの小型衛星がエンジンを搭載していないが故に、「軌道投入」「軌道維持」「軌道離脱」などができないことを挙げる。たとえば空気抵抗や重力による軌道のズレを定期的に修正できないため、軌道が徐々に落ちて寿命が縮んでしまう。運用を終えた衛星を軌道上から離脱させることができず、いつまでも宇宙デブリとして漂ってしまう。そのような問題に繋がっているのだという。

小型衛星のほとんどがエンジンを搭載していないため、いくつかの課題が生じているという
小型衛星のほとんどがエンジンを搭載していないため、いくつかの課題が生じているという

解決策として小型衛星用のエンジンが必要であることは明白だが、それを実現することは簡単ではない。浅川氏の話では「安全性、コスト、多軸方向への推進力、燃費」の全てを兼ね備えていることが求められ、実際に現場で活用できるレベルのものを作る難易度が高いのだ。

大型衛星用のエンジンでは高圧ガスや毒性の高い素材が使用されていることが多く、取り扱いが難しい。また低コストが1つの魅力である小型衛星に見合った価格帯で、なおかつ推進力や燃費の面でも優れたエンジンを作らなければならない。