ところが、「日本酒の酒蔵を新しくつくる」という話は滅多に聞かない。もちろん日本酒よりもビールの方が市場規模が大きいから、という理由もあるだろう。

ただ実は、業界の構造的課題もある。それは、清酒(日本酒)の新規免許の取得が実質的に規制されている、ということだ。

そんな日本酒業界でも、真正面からでなければ “抜け道的に” チャレンジできる方法がある。そのひとつが「その他の醸造酒」という厳密には日本酒ではないジャンルの免許を取得し、日本酒の製法をベースにしたお酒をつくる、というものだ。

両者の違いを簡単に整理すると、「清酒(日本酒)」とは、米、米こうじ、水を原料とし、こしたお酒のこと。「その他の醸造酒」では、日本酒の製法をベースにしながらも“こさない”お酒「どぶろく」をつくるか、発酵過程で米や米こうじ、水以外の指定の副原料を使えばお酒をつくることができる。

haccobaは「その他の醸造酒」という免許を取得し、本来日本酒には使わないような副原料も使いながらお酒をつくる。ある意味で「日本酒」という枠に囚われない自由な発想で挑戦をしていこうとしている。

2つの自由を目指す「Craft Sake」 のカルチャー

せっかく、ある程度自由に酒づくりができる免許区分なのであれば、日本酒の伝統を大事にしつつも、クラフトビールのように創造的で自由なカルチャーでお酒をつくってみても良いのではないか。それが haccoba のスタンスだ。

このスタンスは、私たちと同じ免許区分でいち早く酒づくりに取り組んでいるWAKAZE(ワカゼ)というパイオニアの存在の影響が大きい。実はWAKAZEをはじめ、同じジャンルの酒蔵をつくろうとしている仲間が知る限りでもあと2〜3社はある。

これからジャンルとして確立されるのか、それとも小さなスタートアップ数社の取り組みで終わってしまうのか。そのスタートラインに立っているのが「Craft Sake」というお酒なのかもしれない。

そんな中、haccoba としては大きく2つの「自由」を実現する酒づくりを目指している。

1つ目は「味わいの自由」。米や米こうじ、水を原料としつつ、クラフトビールのようにフルーツやハーブ、スパイスなどを入れて、味わいや香りの違いを楽しむ。最初の試験醸造酒は、ビールの原料である「ホップ」を使ったお酒をつくる。日本酒(米)のクリアな甘みと旨みに、ビール(ホップ)の鮮烈な苦味と香りが調和することを目指す。

2つ目は「つくりの自由」。酒蔵を新しく立ち上げるということ自体が稀有なものだからこそ、お酒を「飲む」だけではなく「つくる」過程も一緒に楽しむコミュニティをつくる。具体的には、コミュニティ内で新しいレシピの企画や、パッケージデザイン、メインプロダクトを決める投票企画などをオンライン・オフライン両方で実施し、酒づくりやブランドづくりに参加できる仕組みにしていく。