ビールの原料ホップを使った「古くて新しい」お酒

 

 

Craft Sake の第1弾として haccoba がつくるのが、ビールの原料「ホップ」を使ったお酒。ビールと日本酒の掛け算で新しい味わいをつくることで、クラフトビール好きにも興味を持ってもらえるのではないかというマーケット拡大の視点もあるが、それだけではない。

実は haccoba の拠点でもある東北地方では、古くからホップ(厳密には唐花草)を使った酒づくりが行われていたという文献がある(参照:『諸国ドブロク宝典』)。

しかし、一般家庭で行われていたような酒づくりのため、製造免許が必要になってからは実質的に途絶えてしまった製法だ。ただ、昔ながらの製法にも回帰することで、「一見新しいけれど実は伝統を受け継いでいる」という“ものづくりのあり方”を目指したいと考えた。

土地の文脈も受け継ぎながら、いまの飲み手にとっても素直に美味しく面白いものをつくりたい。そんな思いから、Makuakeで限定販売する試験醸造酒は、味わいや香りの違う2種類を用意し、どちらが美味しいか投票企画を実施する。飲み手とともに酒蔵としてのメインプロダクトを決めていく、参加型の商品開発を行うことにしている。

日本酒にホップを加えた伝統製法(花酛)をベースとしながら異なるホップを付加し、味と香りの違いを表現した試験醸造酒タイプAとB

再編集の先に描く、発酵文化の復活と継承

クラフトビールのカルチャーで日本酒を捉え直すことで新しいお酒をつくれると考えているが、本当に実現したいのは「日本酒(発酵)文化の復活と継承」だ。

例えば最初の試験醸造酒でホップを使ったお酒をつくるが、これも先に述べた通り、東北地方でかつて行われていた「花酛(はなもと)」というどぶろく(濁酒)の伝統製法に根ざしたもの。酒づくりが自由にできなくなってから途絶えてしまったレシピを復活させつつ、現代の視点で再編集する。

また、飲み手をつくり手側に巻き込むのも、本来自由に行われていた酒づくりを身近な「日常」に取り戻すためのもの。単純にお酒を「つくる」という行為自体が、現代においては新鮮で今までにない体験価値になると考えているのもあるが、そこから本格的につくり手になりたいと思ってくれる方が増えると、よりイノベーションが起きやすい業界構造になるかもしれない。

来年2月頃の営業開始を予定している酒蔵のスケッチ画像 ©️Puddle Inc.

新しいつくり手が増えることで、きっと新しい飲み手も増えるだろう。さらに、多様なプレイヤーが出てくることで、既存の伝統的な酒蔵さんがつくる日本酒の魅力に回帰する方も増えていくのではないだろうか。

日本酒を再編集したCraft Sakeを楽しむことが、自然と日本酒や発酵という日本の伝統文化を継承していくことになる。お酒の飲み手がいつの間にか文化の “つくり手” にもなる。