都心部やオフィス街の居酒屋チェーン、飲食チェーンが大きな打撃を受けている反面、住宅地や地方の飲食店、もしくは同じエリアでも居酒屋以外の業種などはかなり回復してきている店舗も多いそう。直近は回復傾向のある飲食店に対してしっかりと価値を提供する期間と位置付け、新規のお店会員の獲得も進めていく方針だ。

ユーザーサイドに関しても8月の月間利用者数が昨年同月の数字を数%上回った。もちろんコロナの影響を無視することはできないが、再び成長を狙える目処が立っているという。

個々人が最適なお店を探せるサービス目指す

現在のRettyのデザイン
現在のRetty。クチコミを基に算出した「人気店」を始め、投稿者・閲覧者向けにさまざまな機能が追加されている 画像提供 : Retty

今後は引き続き国内の既存事業の成長に向けて投資をしていくほか、2017年からスタートしているタイでの事業展開や、モバイルオーダーシステムを始めとした飲食店向けの新サービスにも力を入れる。

タイに関してはすでに投稿フェーズが進み、まさにユーザー数が増え始めている段階。日本と同じように、ここから閲覧ユーザーを獲得するための施策やマネタイズに向けた動きを加速させていく計画だ。

国内については「飲食店側の機能を深める方向」で事業を広げる予定。8月には飲食店経営のDX実現に向けた新事業の第一弾として、手持ちのスマホから注文・決済を完結できる「Retty Order」を今秋より提供する方針を打ち出した。

「モバイルオーダーに参入を決めた経緯も、飲食店の負担をもっと減らせると考えたからです。店員がその都度注文をとって、厨房に伝えて、毎回会計を計算する。モバイルオーダーの仕組みがあれば、その手間が全部なくなり飲食店の経営も軽くなります。これは業界にとって中長期的に必要なことですし、他の機能も含めて飲食店の課題解決という切り口ではまだまだやれることがたくさんあります」(武田氏)

今秋より提供予定のモバイルオーダーシステム「Retty Order」
今秋より提供予定のモバイルオーダーシステム「Retty Order」 画像提供 : Retty

先行する中国では約500万店ある飲食店のうち、すでに100万店ほどがモバイルオーダーを取り入れている。モバイル決済の浸透度など事情は異なるが、日本でもその辺りのインフラが整備されてくると、かなり大きな市場になる可能性はありそうだ。

またモバイルオーダーが広がれば、「どのユーザーがどんなメニューを注文したのか」といった飲食店内における行動データを収集できるようにもなる。武田氏の中にはサービス上に蓄積されたさまざまなデータを基に、お店選びの体験をさらに進化させていきたいという考えもあるようだ。

「中長期的にはデータを活用しながら個々人が最適なお店を探せる体験を磨いていきたいと考えています。たとえば麻布十番に行って12時にRettyを開くと、過去にいったお店や行きたいと思っていたお店の情報、店舗の空席状況などを踏まえて『このお店はどうですか?』と自分に合ったお店が提案されるような世界観を実現できれば、検索自体も不要にできるはず。そのような体験を通じて、飲食店とユーザーを繋いでいくような存在を目指していきます」(武田氏)