事業の成長が鈍化するとともに社内の雰囲気も次第に悪くなる。その時期にRettyを離れて別の道に進むメンバーも相次いだ。
「お店側の写真やメニューがちゃんと設定されているようにサポートするなど、ユーザーの来店理由に繋がる基本的なことが徹底できていませんでした。実際にどのくらいやれば来店に繋がるのか、明確な基準を定め数値化しながら方針を1つずつ決めて。『継続率プロジェクト』を立ち上げ、社内のリソースをそこに集中させることを宣言して、みんなで現状を打破する方向へ舵を切ったんです」(武田氏)
社員の退社など痛みを伴うことにもなったが、結果的にこの苦境を乗り越えたことで組織としては一段階レベルアップすることにも繋がった。数ヶ月後の2018年8月には創業以来初となる単月黒字化を達成。しっかりと利益を出せる体質が社内に構築できていったのと並行して再びユーザー数も拡大し、同年11月には4000万MAUを達成した。
コロナの苦難も乗り越え上場へ
それから約2年の月日が流れ、本日ついにRettyは上場を迎えた。
同社の2019年9月期(第9期)の通期売上高は22億6800万円で純利益が1億5500万円。前期から売上を拡大(第8期の通期売上高は16億9000万円)するとともに、黒字化を達成している。
もちろん2020年はさらなる業績拡大を見込んでいたが、武田氏が想像もしていなかったような年になったはずだ。飲食業界は新型コロナウイルスの影響が特に大きく、Rettyもまたその例外ではなかった。緊急事態宣言が発令された4月には月間利用者数が2445万にまで落ち込み、お店会員数も減少している。
その時期に比べると数字も回復してきていはいるものの、上場するとなると今まで以上に投資家から業績をシビアに見られるはずだ。なぜ武田氏は今のタイミングで上場を決断したのか。
「管理体制を含めようやく会社としての基盤が固まり、準備が整ってきました。コロナの影響も受けましたが数カ月の間に事業も回復してきており、中長期的な成長を見込めるようになったのが1番の理由です。テイクアウトや飲食店経営のDX需要など、新しいテーマやニーズが確実に生まれ、今までとは違った成長の要因を作れるチャンスも出てきました。このタイミングで上場し、ステージを1段階上げたいと考えています」(武田氏)
飲食関連ではどうしても「倒産」や「大幅な業績悪化」などネガティブな報道が目に付くが、細かく分解してみるとその実態は多種多様だというのが武田氏の見解だ。