自分自身もプレイヤーであることが、ファン視点をつくる
徳力 サイバーエージェントでは、主に何を担当されていたのですか。
山崎 最初はアメーバ事業部に配属されて、データアナリストをしていました。2013年当時は、「怪盗ロワイヤル(DeNA)」や牧場系ゲームが流行っていた頃、バトルカードゲームのグラフィックのクオリティがガンガン上がっているときで、社内でもブラウザゲームをたくさんリリースしていましたね。
その一方で、経営側としては、きちんとデータを蓄積して、売上アップや離脱防止しなければというフェーズになっていて、経営直下でデータを分析していました。
徳力 出身学部は、文系でしたよね。
山崎 はい。ただ、ゼミで統計を学んでいましたので。それに、実際はアナリストというよりも、プロデューサーの横についてデータ基盤や戦略を一緒に考えるような仕事でした。例えば、こういう状況だと離脱しやすいから、設計をこう変えようと提案したり。
それまでは、スマートフォンのアプリで数十億円の売上ができるというイメージは全然わかなかったのですが、入社して手触りのような感覚で、それが分かるようになりました。
徳力 おもしろいのは、いまの「手触り」という言葉ですね。数字だけ見てしまうと、ユーザーの心を忘れがち。でも、山崎さんから手触りという言葉が出てくるというのは、データだけにこだわっていないからだと思います。
山崎 そうですね。難しいですが、例えば、ゲームでダウンロード初日にステージ3まで到達すると、「ARPU(Average Revenue Per User/1ユーザーあたりの平均売上)」が上がるというデータがあるとします。
では、全員が簡単にステージ3に到達できるように設計すれば、ARPUが上がるかといえば、そうではないんです。その間に、何を体験するかが、継続理由につながるわけなので、ステージ3に到達するまでの時間を短くしたり、簡単にしたりするのは、適切なソリューションではないんです。
徳力 多くの人が、だまされやすいパターンですよね。なぜ、ユーザーの体験を見ないことが起きてしまうのでしょうか。
山崎 自分でプレイしていないんじゃないでしょうか。先ほどの例で言えば、重要なのは、ステージ3までにライフが減ったり、友だちに助けてもらったり、強い敵を倒したりといった経験をするから継続するということ。数字の分析だけでは、因数分解の解像度が低すぎるんです。