売上がなければ、心血を注いだプロダクトも消えてしまう


徳力 なるほど。その頃から、自分もやってみることで、お客さん側の視点に立つということをされていたのですね。

山崎 はい、めちゃくちゃしています。

徳力 でも、普通なら「そんなことやっている暇があったら、分析しろ」ってなりがちじゃないですか。

山崎 そうかもしれません。ただ、僕の家は常にレコードが流れているような環境でしたし、僕自身もエンターテインメントが好きだったので、何かにのめり込んで情報をインプットして、そこからアウトプットするのが得意なのかもしれません。

徳力 なるほど。ゲームのデータ分析をしながら、自分自身も楽しむというバランスが良かったんですね。ソーシャルゲームのデータ分析をしている人の中で、マーケティングができる人はおそらく少ないと思うのですが、山崎さんの場合はそれができているのは、なぜですかね。

noteプロデューサー 徳力基彦氏
 

山崎 結局、プロダクトは、売上がないと潰れてしまうんです。会社としては、利益を出さないといけないわけで、いつまでにどのぐらいのユーザーがいて、売上がなければ、撤退するというラインが決まっています。

それは仕方がないことですが、キャラクターを描くデザイナーやゲームをつくってきたエンジニアは心血を注いでつくっているので、それがなくなってしまうときは、まるでチームが葬式のような空気になります。

それは本当に心が痛くて、もっと自分にスキルがあったらこんなことにはならなかったと思って、悔しかったこともありました。

徳力 普通のデータアナリストだと、事業から一歩引いた解析屋さんになりがちですが、山崎さんはプロデューサーの横にいたこともあって、その気持ちがのりうつったのかもしれませんね。

山崎 はい、結構ミーハーなので、テンションがうつってしまうのはあると思います。経済が回らなければ、優れたプロダクトも簡単になくなってしまうという強迫観念は、スマートニュースというわりと基盤が強い会社にいたときも、毎日持っていましたね。

鈴木健氏の一言で、スマートニュースに転職


徳力 サイバーエージェントでは、ずっとその仕事をしていたのですか。

山崎 いえ、2年経ってからは、渋谷クリップクリエイトという新会社の設立に手を挙げて、参画しました。当時はYouTubeの広告の仕様が固まり、大手企業がテレビとYouTubeの併用を始めたころでしたが、サイバーエージェントには動画を企画する会社がなかったんです。

そこで、放送作家の鈴木おさむさんを社外取締役に迎えて、シェアされて話題になる動画の企画制作をする子会社をつくったんです。

徳力 なるほど。そこで明確にマーケティング領域に踏み込んでいくわけですね。

山崎 そうです。サイバーエージェント本体の営業担当に同行して、クライアントに企画をプレゼンするといったことを最後の1年でやりました。

その事業はすごくおもしろかったですね。例えば、ゲームのプロモーションでは、ゲーム公式の紹介映像よりも、YouTuberがゲームを紹介した方がずっとユーザーに届きやすいんです。

また、YouTuberの攻略動画を見てからプレイすると、初めからどう楽しめばいいかが分かっているから、滞在時間も上がります。鈴木おさむさんからもアドバイスをたくさんもらいました。