ライフスタイルホテルとして徹底した2つの要素

THIRD石垣島の特筆すべき点は2つある。それがミレニアル世代に特化した「徹底したブランドづくり」と「テクノロジーによる業務効率アップ」だ。

「徹底したブランドづくり」は、ミレニアル世代をターゲットにしたデザインや設備を導入。その1つが、宿泊料金に飲食代を含む「オールインクルーシブステイ」。また、宿泊施設の約2割をブックラウンジといったパブリックスペースにした。フィットネスルームだった場所は、サウナスイートルームとして改装予定とのことだ。

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「オールインクルーシブステイは、まさにミレニアル世代に特別な体験を届けるために考えたものです。前提として、宿泊代は高い。それにホテル内の食事は割高で、それほど活用されていません。ならば、宿泊代内で飲食も自由に楽しめるようにできないかと考えたとき、思いついたのがオールインクルーシブステイでした。国内のホテルで実施しているところはほぼなかったので、早めにポジションを取りにいくことも狙いでした」(佐々木氏)

そして「テクノロジーによる業務効率アップ」。佐々木氏いわく、ホテルで働くスタッフの多くは接客に時間を割いているように見えて、実は1日の半分以上をデスクワークに費やしているという。そこでTHIRD石垣島では「デスクワークをなくす」をコンセプトにシステム化に注力。QRコードを使ったセルフチェックイン機や、顔認証での開錠・施錠を可能にした。宿泊者は今までにないホテル体験ができると同時に、ホテルスタッフは空いた時間で、本来費やすべき「宿泊体験向上」へ注力するようになった。

「そもそもホテル業界で働くスタッフの年齢層は高く、キャリアも年功序列型が一般的です。一方で、THIRD石垣島のホテルスタッフの年齢層は平均27歳。何かあれば僕に対しても『それはゲスト想いじゃない』と突っ込みます。そんなフラットな組織を維持させていきたいんです」(佐々木氏)

500冊以上の本を揃えたブックラウンジ
500冊以上の本を揃えたブックラウンジ

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自社ホテルブランドとして誕生し、約5カ月経とうとしているTHIRD石垣島。ホテルビジネスは、今のところ外資系が強いイメージもある。だが、国内ではホテルプロデューサーの龍崎翔子氏が手がける「HOTEL SHE」が人気を集めるほか、今後はアラタナ創業者の濱渦伸次氏が手がけるホテルのD2Cブランド「NOT A HOTEL」も立ち上がる予定で、ライフスタイルホテルの新ブランドが勢いを強めている。

「これまでのホテル事業は外資系が強い印象もありますが、国内でもスタートアップが増えてくると思っています。HOTEL SHEやNOT A HOTELは、THIRD石垣島と目指す方向性は似ている。『THIRD石垣島があるから沖縄へいこう』と言われるようなブランドを、早く確立したいところです」(佐々木氏)