「顧客中心主義の時代、DXの恩恵が顧客に行き渡らなければ、表面的な“スベる”DXになってしまいます。誰に向けてのDXなのかをよく考えて、取り組むべきだと思います」(髙柳氏)
その上で、CX・DX・EXのサイクルの中でのDXの重要性について、次のように説明する。
「デジタルが当たり前の時代、それをうまく活用して顧客に良い体験を返していくことはマストです。そこで、デジタル上においても対面でのコミュニケーションと同じように、ユーザー1人ひとりを“個客”としてとらえながらコミュニケーションを取れるような、基盤が必要となります。基盤がなければ、従業員の方も思う存分成果を発揮できません。EX最大化のための下地としても、DXへの取り組みは必要。DXの基盤の上で従業員の方がよいパフォーマンスを出し、最終的にCXへ返っていくという、C・D・Eの流れが大切なのです」(髙柳氏)
KARTE事例に見るCX・DX・EXサイクルの循環
CX・DX・EXサイクルの好循環を実現した事例にはどのようなものがあるか。KARTEの顧客企業のケースで髙柳氏に説明してもらった。
アプリのデザイン改善への動きが、全組織的なCX向上への動きにつながったと髙柳氏が紹介するのが、三井住友銀行の例だ。
2019年3月に新アプリがリリースされた「三井住友銀行アプリ」。同行では支店や出張所の整理・縮小が進む中で、スマホを24時間顧客の手元にある1つの支店として位置付け、「窓口で受けられる丁寧な接客を、スマホでも実現したい」という考えから、KARTEを導入し、改善を図っている。
この事例では、デザインを重視して進行したプロジェクトが功を奏して、新規ダウンロード数が増加。このことが行内でもわかりやすい好例と受け止められ、ユーザビリティーやデザインの重要性が再認識された。単なるアプリのデザイン向上にとどまらず、行内でCX重視の気運が高まり、よい影響が現れているという。
また三菱地所の事例では、よりよいCXを実現すべく、全社を対象にしたDX推進を図っている。
三菱地所は、東京・丸の内を中心にオフィスビルや商業施設などを多く有している。同社は街を訪れるユーザーの体験を向上するべく、オンラインとオフラインを横断した共通マーケティング基盤としてKARTEを採用した。
オンラインのサービスと、オフィスや商業施設、住宅など、事業ごと、アセットごとに顧客との接点が散発的になり、来訪者と1人の顧客としての関係を築きにくかったという三菱地所。よいCXを実現するには、オンラインとオフラインをまたいでデータ基盤を整えるDX推進がマストである、と同社ではとらえている。