工業用間接資材を扱う事業者向けネット通販のMonotaRO(モノタロウ)のケースでは、「従業員の能力が拡張されることによって、やりたいことがスムーズにアウトプットできる状態が作れた」と髙柳氏。これが最終的な従業員の満足、EXの向上につながっていると語る。

モノタロウは以前から、データサイエンティストやエンジニアを多く抱えるテックカンパニーでもある。それがKARTEを活用する中で、PDCAの速度が3倍になったそうだ。「来月やりたい」と言っていた案件が「来週やります」というスピード感に変わり、チームの生産性向上にも結び付いている。

また、KARTE活用によって開発依頼が不要になったことで、他部署との調整など、インナーコミュニケーションに取られていた時間を外のユーザーに振り向けて、価値を提供し続けるサイクルが作れたという。「働き方の満足度が上がることで、従業員自身にも、ユーザーにもよい体験がデリバリーされている状態」と髙柳氏は述べている。

髙柳氏は「1人ひとりの個客の声を知ること、個客を深く知ること自体が従業員のモチベーションにつながることは結構多い」とも語る。

プレイドは資本業務提携するEmotionTechと共同で、CXの簡易診断サービス「Simple CX Survey」を提供している。このサービスではNPS(ネット・プロモーター・スコア)を中心とした簡単なアンケートにユーザーが回答することで、サービスの担当者や企業の経営陣が個客の声と向き合うことが可能。定量だけでなく定性面でも情報を得ることで、さらに良い顧客体験の創出につなげられるというものだ。

「個客の声の可視化や“手触り感”のようなものを企業がどれだけ把握できているかということは、サービスの差別化要因につながります」(髙柳氏)

数字に向き合うだけでなく、人へユーザーにどうアプローチできるかという分析は、まだ機械よりも人間が得意とするところだ。KARTEは「データを人のように把握できる」ことを特徴としており、担当者のモチベーションや能力のエンパワーメントを図ることも目指しているという。


ウィズ/ポストコロナ時代のCX・DX・EX

髙柳氏は、ウィズコロナ/ポストコロナ時代のCX・DX・EXについて、以下のように語っている。

「これまで良しとされてきたものが、価値観の変化によって真逆になるということも出てきました。たとえば従来の小売業では店舗において、『密をつくってナンボ』というような、人が来てくれることが良いという状況がありましたが、今は密をつくってはいけない。接触時間についても、丁寧に接客することが重要でしたが、できるだけ短縮していかなければなりません」(髙柳氏)