この3つのXの視点から、企業が良いCXを実現するための考え方や施策の事例について、プレイド取締役の髙柳慶太郎氏に聞いた。

顧客中心主義の時代に高まる“3X”の重要性

なぜ今、CXの重要性は高まっているのか。髙柳氏は「モノがあふれてコモディティ化した結果、企業の競争優位性がモノの価格やスペックで決まるのではなく、手触りや経験、感覚重視へと移っているからです」と語る。

髙柳氏は、あらゆる事業、産業で顧客中心主義の流れが加速しているとも指摘し、「スマートフォンやSNSの台頭も相まって、選択権はユーザー側へ移っており、この先、その流れはより加速すると思います」と話す。

このトレンドの中でプレイドが着目しているのが、良いCXを実現するためのDX、EXの存在だ。まず従業員体験、EXの大切さについて、髙柳氏は「どんなに味の良いレストランでも、家族とおいしく食事をしているときに厨房の中から怒号が聞こえてきたら、一気に料理がまずくなりますよね」と例え話で説明する。

「CX向上につながるような情緒的な価値は人が生み出すもので、どんな会社や事業でも、消費者との最終的なタッチポイントは人である」という髙柳氏。その“人”、つまり従業員が自分たちのブランド、企業についてより良く伝えたいという感情を持っているかどうか、あるいは顧客のことを最大限に考えてサービス提供できているかどうかが、企業の競争優位性につながると語る。

「働く人が最終的な価値を提供するので、EXとCXには密接な関係ができます。EXというと福利厚生や報酬に光が当たりがちですが、それだけが重要なわけではありません。スターバックスの接客などはよく例に挙がりますが、アルバイトであっても非常にモチベーション高く働いているし、仕事へのプライドも持っている。しかも提供するカップへメッセージを書くといった、ちょっとした余白のようなものもあります。働く人自身が顧客のことを考えて、『顧客体験をもう一歩、良くしよう』というアクションができているということだと思います」(髙柳氏)

ではDXはCXとどのように関連するのか。髙柳氏はまず「顧客とデジタルのタッチポイントがない企業・業界は、もはやなくなってきています。新型コロナウイルスの影響もあって、いわゆるDXは今後も加速すると思います」と述べている。

ただし「大切なのは、誰を向いてやっているDXかということ」と髙柳氏。DX推進は効率化やコスト削減の企業側のメリットの文脈で語られやすいが、デジタル化の恩恵が最後にユーザーへ還元されなければ、独りよがりのDXになってしまうと語る。