Netflix、5年での変化
──Netflixが日本でサービスを開始してから5年が経ちました。
坂本:ここ1〜2年でNetflixは映像制作業界でも市民権を得て、知名度もすごく向上したと思います。それこそ、5年前にサービスを開始した頃は監督やプロデューサー、芸能事務所の人たちと話をする際、最初に「そもそもNetflixとは何か?」を説明し、サービスの特徴や制作プロセスなどをきちんと理解してもらうことからスタートしていました。
ただ、今は状況が180度異なります。特に80年代を舞台にAV監督の村西とおるさんとその仲間たちの青春や熱狂を描いた『全裸監督』を配信してから、私たちのもとに企画のオファーをいただいたり、相談の話をいただいたり、活発にコミュニケーションを取らせていただく機会が増えました。振り返ってみて、魅力的な作品を数多く配信し、それを幅広い人たちに届けられたことで、ここまで成長できたのかなと思います。
また、現在はスタジオ機能の内製化とローカル化を推進しています。ひとつの作品を構想してから配信まで、いろんなチームに支えられている。もちろん私がクリエイティブの統括はしますが、私以外にもプロダクションを管理する人や編集過程をサポートする人など、さまざまなチームで動いています。
こうした動きは5年前にはできなかったことなので、改めて多くのスタッフがNetflixの作品づくりに関わってくれているな、と思います。
櫻井:アニメ作品に関して、数年前まではどうしてもSF(サイエンス・フィクション)系やファンタジー系にジャンルが偏りがちでしたが、ここ数年でギャグ系や日常系
など作品のバリエーションが増えました。ただ、アニメーション作品はどうしても制作に時間がかかってしまいます。
大体ひとつの作品を制作し、配信するまでに3〜4年かかるので、配信の権利を預かるだけでなく、いかにクオリティの高いアニメ制作会社と一緒に制作できるか、が大事になってきます。実際、Netflixは2018年にプロダクション・アイジー、ボンズとのパートナーシップの締結を筆頭に、ここ1〜2年の間に複数のアニメ制作会社と中長期的に作品づくりに向き合える体制をつくることに注力しています。
それこそ、最初はアニメ制作会社にパートナーシップ契約の話をした際も、Netflixは外資系の会社ということもあり、契約書の中身を熟読されるなど警戒されている感じがありました。ただ、アニメ制作会社とのこうしたやり取りも2周目、3周目に入ってきたので、受け入れられ方はだいぶ変わってきたと思います。