「前回と同じですよね」という感じでお互いに契約書のフォーマットをわかっているので、やりとりが早くなり安心してご一緒いただけているのでは、と思います。

【独自】Netflixが本気を出す2021年・日本市場攻略──実写&アニメ強化の狙いを日本幹部が明かす
 

坂本:それはやはり、櫻井がアニメ制作の現場を知っているということも大きな要因ですね。現場の制作プロセスを知っていて、アニメ制作業界の現状を理解している。そんな人間が責任者として中に入り、Netflixのリソースを最大限活用しながら、アニメ業界に恩返しをしようとしている。そういう姿勢を見ると、多くのアニメ制作会社は「ただの外資系企業ではない」と思うんじゃないでしょうかね。

(編集部注:坂本氏は映像制作会社で働いた後、2015年にNetflixに入社。一方の櫻井氏も前職はアニメーション製作会社のProduction I.Gで、脚本家・プロデューサーとして活躍した後、2017年にNetflixに入社。2人とも映像・アニメ制作の現場で働いた経歴がある)

櫻井:坂本もそうですが、"現場上がり”というのは信用されているポイントではないでしょうか。テレビアニメ『鬼滅の刃』の制作を手がけたufotableの近藤光社長ともお付き合いがありますが、「櫻井さんはテレビプロデューサーやパッケージ製作会社のプロデューサーではなく、現場上がりだから信用しているし、話をしていても楽しい」と言われました。現場で苦労してきた連帯感を共有することで、仲間だと思ってもらえるんだと思います。

坂本:実写作品でも、「制作進行」が一番現場を走り回るわけです。実際、私も制作進行を経験したことがあるので、隅々まで制作現場の人たちの気持ちを理解しながら、そういう人たちが何を求めているのかまでを考えられるのは作品全体のクオリティをあげることにおいて良い影響があります。

また、日本と海外を含めて、それぞれの国の制作プロセスを理解した上でNetflixにとってベストな制作アプローチは何か、を提案するのも私たちの役割なので、現場で汗水垂らして走り回ってきたバックグラウンドが今に生かされているのかなと思います。

江戸前寿司も出すし、カリフォルニアロールも出す

──アニメ作品に関しては『スプリガン』や『パシフィック・リム:暗黒の大陸』、『テルマエ・ロマエ ノヴァエ』などの作品の制作・配信を発表されていましたが、新規作品は増やしつつ、放送中の作品のライセンスも獲得していくという方針で進めていくのでしょうか?

櫻井:そうですね。いま流行っている作品に関してはきちんと届けられるようにしていかなければいけない、と思っています。そういう意味では、従来のアニメファンを満足度を高めることも戦略の柱として重要ですが、一方で今までアニメを見ていなかった人たちも世界規模で取り込んでいける機会が大いにある、と考えています。