パチンコ、麻雀、女、酒、タバコを欠かさず、ほぼニート状態の父親。それに母親が共依存するという複雑な家庭環境に育った。14歳のとき、父親が自己破産して失踪。貧しい生活を支えた母親は病に倒れ、半身不随に。苦境のなか、独学で大学に合格、奨学金を得た。そして、兄・成田悠輔がくれた本をきっかけに「起業」を志した。話題の書『14歳のときに教えてほしかった 起業家という冒険』(ダイヤモンド社)の著者・成田修造は、体当たりで起業家の道を歩むようになる。本書は起業を通じた人生の指南書で、何歳からでも組織に頼らず、副業・独立・起業でビジネスを展開するときに必須の内容。これからは会社員であっても、自分で事業をつくれると強い。その思考法とノウハウを全公開する。
※本稿は、『14歳のときに教えてほしかった 起業家という冒険(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【会社員必見】朝から晩までほぼ仕事…それでも楽しかったベンチャー企業の仕事とはPhoto: Adobe Stock

スタートアップは
やるべきことが無限

スタートアップではやるべきことが無限にありますから、クラウドワークスを退くまで、気がつけば僕は本当に多種多様な仕事を経験しました。

ボクが担った仕事のいくつかをご紹介します。

【サービス改善】

クラウドワークスの立ち上げ期は、「発注する企業を集める」「受注する個人を集める」「その両者がマッチングする仕組みを作る」という3つのことに注力しました。

そのために会社全体の共通課題としたのが、サイトのマッチング精度を上げるためにユーザー体験(UX:User Experienceの略)を改善することでした。

役員や社員が毎週集まり、UXの改善点を議論し、決まったことをすぐさま実装しました。

最初から完璧なものを作ろうとするのではなく、まずは世の中にサービスをリリースして、反応を見ながら改善を繰り返すのがスタートアップのやり方です。

【集客】

サービスの改善と合わせて、オンライン上でサービスを発見してもらいやすくするためにSEO(検索エンジン最適化)にも力を入れました。

クラウドワークスのユーザーが検索しそうなワードを考え、そのワードで検索をするとクラウドワークスが表示されるようにサイトを見直し、コンテンツを作ります。

さらに、グーグルやヤフー、フェイスブックなどに広告を出してウェブマーケティングも行いました。ウェブ広告の強みは、リアルタイムで効果を測定できることにあります。

今日は何人が登録して、そのためにいくら広告費がかかったのか。そのようにCPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)を把握できるので、目標と比較しながら、より効果的な打ち手を考えることができます。

どぶ板営業的な
アナログアプローチも

そうしたネットの活用だけではなく、アナログでの認知度拡大にも努めました。

たとえば展示会では、より目を引くようなブースデザインを考え、チラシを作り、「名刺交換500枚!」などの目標を決めて、社内のみんなで必死にとり組みました。

また、大手教育企業やメディア企業などと提携して、企業やワーカー集めをすることもありました。企業提携は独自の要素が多いため、契約条件をその都度交渉する必要がありましたが、PR効果は高く、ユーザー獲得につながりました。

このような地道なとり組みのおかげで、やがて毎月のように新聞やウェブメディアにとり上げてもらえるようになり、会社全体としての知名度を上げていくことができました。

【採用】

クラウドワークスは、社員の年齢層のバランスが絶妙で、それが偏らないようにしていました。

社内を活性化するために、僕のような20代前半の社員もどんどん採用していましたから、僕は週末になると学生のインターンシップの採用イベントに出て会社の魅力を伝えていました。

採用した社員との関係づくりも大切にした点です。

毎月のようにインターンシップで若者が入って仕事をしてくれていたので、彼らとチームワークを高めるために、サービスの改善点を発表してもらうコンテストをしたり、懇親会を開いたりしました。

朝から晩までほぼ仕事

スタートアップの仕事は本当にバリエーションに富んでおり、ハードです。当時を振り返ると、僕は朝から晩まで、ほぼ仕事しかしていませんでした。

オフィスに朝9時すぎに着いたら夜中まで働く日々で、ときには終電の時間がすぎても仕事を続けていました。

食事に気を使う余裕もなく、創業期のオフィスだった東京・青山のコワーキングスペースから近いセルフ式そば店に行って食べ、割引チケットをもらい、また別の機会にそのセルフ式そば店に行くという日々。これがスタートアップの日常です。

ご飯を食べて、
大笑いして、また仕事

でも、そんなハードな日々の中でも、みんなイヤな顔なんてしません。毎日ランチを一緒に食べて、大笑いして、また真剣に仕事にとり組むという生活をしていました。

スタートアップでは膨大な量の仕事を数人で回すわけですから、1人当たりの仕事量は増えていきます。その分、スピーディーに処理していかないと間に合いません。

毎日毎日、チームが濃密に関わり合い、どんどんいろんなことを決めて実行します。だからこそ、仕事の速度が上がる。つまり、成長していくのです。

この量とスピードが当たり前になっていくと、どんどんスタートアップの仕事は楽しくなっていきます。

※本稿は、『14歳のときに教えてほしかった 起業家という冒険』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。