新造せざるを得なかった
北陸鉄道石川線の事情
新車を断念した上毛電鉄に対し、やむなく車両の新造を決断した事業者もある。浅野川線に03系を導入した北陸鉄道は、もう一方の石川線では2025年度に新造車両を導入する計画だ。
同社は現在、両路線で元京王電鉄3000系を使用しているため、浅野川線で走行できるのであれば規格上は石川線でも走れるはずだ。車両が統一できればメンテナンスの効率化などメリットが大きい。
ではなぜ石川線のみ新造車両となったのか。北陸鉄道に聞くと、石川線の新西金沢駅~押野駅間における半径80メートルの急曲線が問題なのだという。安全のため、徐行でカーブを通過しているが、車輪ごとの重量バランスが悪いと脱線の危険性がある。
しかし1990年代以降の車両は、この調整が比較的難しい「ボルスタレス台車」が主流であり、「ボルスタ付き台車」は数少ない。中古市場に出てこないため、新造せざるを得なかった。
実際、2000年3月8日には、中目黒駅構内で03系が脱線衝突した事故が発生しており、東京メトロは以降の新造車両ではボルスタレス台車は採用していない(ボルスタレス台車も重量バランスを調整すれば十分、安全を確保できる。あくまでも比較の話であることに注意されたい)。
経営が厳しい中小私鉄の頭を悩ませる車両更新と、人気の03系をめぐる明暗さまざま。地元利用者からすれば、中古とはいえ車両が20~30年若返るのは素直にうれしいだろう。首都圏を走り抜けた車両の余生が、地方鉄道存続の一助となることを願いたい。