みなさんは、世の中のちょっとした変化に敏感でしょうか。
数字に強い人は、ちょっとした変化に「違和感」を感じ、自分で仮説をたてて、その理由を数字で考えていきます。
経営コンサルタントとしてこれまで2000社の財務分析、1000人以上のビジネスパーソンに会計セミナーを実施してきた平野薫氏は、①世の中の事象に違和感を持つ→②違和感にフォーカスする→③自分なりに仮説を立てる→④数字で根拠を分析し検証する→⑤人に話したりブログに書いてアウトプットする、という一連のルーティンを日々継続して行うことが数字に強くなるコツだと言います。まずは、「違和感」を放置せずフォーカスすることが大切なのです。
本連載では、「世の中のふとした疑問を数字で考えるエピソード」が満載の話題の書籍『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』から一部抜粋し、数字に強くなるエッセンスをお届けします。

なぜ最近唐揚げ店が急増しているのか?Photo: Adobe Stock

タピオカミルクティー屋の跡地に唐揚げ屋が出現

 一世を風靡したタピオカミルクティー屋。小さなスペースで開業でき、設備投資も少ないため初期投資も抑えられ、原価率も低いので高い収益性を見込ます

 また調理ノウハウもあまり必要なく、ちょっとした店舗なら一人で十分オペレーションできます。そういった手軽さから一時は雨後のタケノコのように大量出店していました。

 当時は脱サラしてタピオカミルクティー屋を始めたという人も少なくないと思います。しかし10年前に流行し店舗が増えた“白いたい焼き”と同じで、ブームは沈静化してきており、閉店する店も増えてきています。そのタピオカミルクティー屋の跡地に増えてきたのが“唐揚げ店”です。

 最近はガストが、から揚げ専門店「から好し」を併設させた店舗を増やしていますし、ワタミが「から揚げの天才」という新業態を立ち上げるなど、唐揚げの存在感が増しています。

 日本唐揚協会の発表によると2023年3月時点の唐揚げ専門店の店舗数は推定で4388店舗。2012年の450店舗から10年余りで約10倍となったそうです。

 ここ1年はブームが沈静化し閉店する店もチラホラ出てきたものの、依然として増加しているようです。

 ちなみに数字で物事を考える際には、その数字の規模感を把握するために似たような他の数字と比較することが大事です。この場合には、同じ外食のマクドナルドは約3000店舗、吉野家が約1200店舗と聞けば唐揚げ屋の多さを実感できるかと思います。

なぜ最近唐揚げ店が急増しているのか?

焼鳥は「串打ち三年、焼き一生」だが唐揚げは……

 しかし、なぜ最近唐揚げ店がここまで増加したのでしょうか。

 唐揚げがご飯のおかずだけでなく、お酒のつまみや子どものおやつとして徐々に広がってきていたこともありますが、拡大のきっかけはコロナ禍でテイクアウト需要が増加したことです。

 前述の日本唐揚協会の発表によるとコロナ禍前の2018年の店舗数は1408店舗と、2022年の3分の1です。いかにコロナ禍で唐揚げ屋が急増したのかが分かります。

 なぜ唐揚げ屋がここまで急増したのか? 理由はテイクアウトしやすいということだけではありません。

 まずは低コストで運営できることです。唐揚げ専門店であれば調理器具はフライヤーさえあれば成り立ちます。そのため、初期投資が少なくて済みます。一般的に飲食店を開業する場合、開業資金が1000~2000万円必要と言われていますが、テイクアウト専門の唐揚げ屋であれば300万円程度で開業可能です。

 なおテイクアウト専門店であればスペースも6坪あれば運営できると言われているため家賃もそれほどかからず、ちょうど良いタイミングで同じようなスペースで運営していたタピオカ屋の空き物件が出ていた訳です。

 また近年はウーバーイーツなどを宅配専門の店舗いわゆるゴーストレストランも増加してきており、立地を考慮しなくて済む分、更に家賃を下げることができます。

 もう一つの理由は、オペレーションです。唐揚げは飲食店のメニューの中でもオペレーションが簡単で習熟するまでの期間が短期間で済みます。

 例えば同じ鶏肉を扱う焼鳥は「串打ち三年、焼き一生」という言葉もあるくらい奥が深いです。店主としてお客様に提供できるレベルになるまで少なくとも数ヵ月の修業は必要とされています。

 更に仕込みの時間も長く、一般的には開店の3~4時間前から仕込みを始めなければなりません。一方で唐揚げは、美味しく揚げるコツなどは必要ですが温度と時間さえキッチリ管理すれば大きな失敗はありません。仕込み時間も沢山の部位がある焼鳥と比較すると種類も限られており、それほど時間も掛かりません。

 このような理由から近年唐揚げ屋が急増しています。お隣の韓国では韓国風唐揚げである“韓国チキン”のお店が2022年時点で8万店以上も存在しています。それだけ唐揚げのポテンシャルは高いということですね。こコロナも収束し、かつてほどのテイクアウトの需要は見込めなくなりますが、ここからが唐揚げのポテンシャルが試される時期でしょう。

(本原稿は、平野薫著なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?を抜粋、編集したものです)