また、キャンペーンでフォロワーを増やしてきたアカウントは、僕らが入ってアカウント分析を行うと、懸賞用のアカウントが半分以上占めていることもあります。人間の身体に例えると、癌のステージIV。

徳力 死にはしなくても、メタボ状態とは言えそうですね(笑)。

飯高 はい、厳しい状態です。大きく方針転換する必要があるのだけれど、彼らはそれで評価を得てしまっているので、もう抜け出せない状況になっています。

徳力 そうですね。例えば、フォロワーの7割がキャンペーン用アカウントなので、残りの3割をしっかり見ていきましょうと提案しても、その7割がもったいないという発想になりがちです。

飯高 その通りです。インプレッション数を見てしっかり届いていると言いますが、懸賞目的のアカウントは動いていないに等しいんです。その本質を知らずに風呂敷ばかりを広げているけれど、実は中身がないという状態を理解してもらうには、まだまだ難しいなと思っています。

ユーザー分析から「口コミが期待できるフォロワー」獲得へ

徳力 フォロワーの大半がキャンペーン用アカウントでも、ライバル企業より多ければいいと言われてしまった、ということもありそうです。数値化しづらい「質」が分かりやすい「量」に負けることが頻繁に起きていますが、そうした状況を抜け出すためにはどうすればいいでしょうか。飯高さんでしたら、すでに突破口を見つけているのではないでしょうか。

飯高 それで言うと、見つけていますね。私は「質」をフォロワーになってくれ、口コミする確率が高い人と定義しています。BtoC商材であれば、画像付きのツイートやInstagramの投稿をUGCと捉えて、この投稿数を指標にしています。

徳力 フォロワー数ではなく、UGCの数をKPIにするということですか。

SNSでモノを買う時代の新しいマーケティング手法とはホットリンク 執行役員CMOの飯高悠太氏 (左)と、ピースオブケイクnoteプロデューサーの徳力基彦氏(右) 提供:Agenda note

飯高 はい、絶対にそうした方がいいと思います。書籍では、菓子メーカーのシャトレーゼの事例を紹介していますが、まずはユーザーインサイトを見て、シャトレーゼのケーキをSNSに投稿してくれる人はどんな人なのか、データをクロス分析しながら口コミする確率が高いクラスターを見つけます。

 同じシャトレーゼでも、おいしいから買うという人もいれば、孫が喜ぶから買うという人、アレルギーでも食べられるから買うという人まで、さまざまです。それぞれの属性に対してアプローチを仕掛けてフォロワーになってもらい、口コミをしてもらえる確率を上げていくんです。

徳力 なるほど。では、これまでフォロワー数をとにかく増やすことに集中してきた企業の担当者は、フォロワーをグループごとに切り分けて、こういう目的の人にはこういうアプローチをしたら、こういうUGCが生まれるかもしれないという仮説のもと、PDCAを回すということでしょうか。